- k a r e s a n s u i -

戦国ランスオリキャラであれこれ

「あ”〜〜〜」
「あ〜〜〜」

 時は六月、雨も降らずに晴天が続き気温は夏に向けて上昇一途、鍛冶場は既に我慢比べの会場と化しておる。

「無事に〇五式の量産が始まって忙しい事は忙しいが……。なんとか、種子島の周囲はまだ平穏じゃのぉ……」

 四月の販売戦略会議からこっち。世界は動いておる。

 まず、死国。見捨てられた者と鬼のすまう彼の地にて、どうやら呪い付きたちが「タクガ」という国家を立ち上げたらしい。もともとは北条氏の支配下であったんじゃが、まあ別に統治しとったわけではないしの、静観するつもりのようじゃ。

 次、こっちは儂らにも関係があるの。織田家が邪馬台の巫女機関、三河の徳川家を攻め滅ぼしたのじゃ。徳川は妖怪狸が人間の国を乗っ取った国家じゃし、まああんまり気にはせなんだが……巫女機関を攻め落とした、となると話は変わってくる。
 巫女機関とは、まあ国家というより宗教機関……なのかのぉ? 神社を中心とした自治体のようなもので、なんちゅーか、一大遊郭街? 御神籤を引いて当たりが出たら巫女さんが性的なサービスをしてくれる、らしい。なんちゅーか、滅茶苦茶じゃな。じゃが、全国から一定のニーズがあり、かつ征服しても利となるものが余りに少ないので、暗黙の不可侵地帯と認識されておったんじゃ。
 織田の国主である信長が、なにやら病で臥せっておるようで、現在の織田はどうも大陸から渡ってきた外国人の意向が反映されとるらしいが……民草の風聞といい忍びからの情報といい、好色かつ唯我独尊というのは本当らしいの。厄介なもんじゃわい。

「あ”〜〜〜」
「あ〜〜〜」

 ……ふう、考えとるうちに汗も引いたの。
 蒸気機関の前に作ってみたスターリングエンジンを動力源にした扇風機は、今日も絶賛稼動中。鍛冶師連中にも有り難がられておる。

「技師長〜、お〜い技師長〜……って、まぁた妹様とダレてるんですか」

 そういいながら、柚美と二人で扇風機に向かって「ワレワレハウチュウジンダ」ごっこをやっておった儂に声を掛けてきたのは、儂の一番弟子というか右腕というか、とにかく最も信頼する部下である西表麻耶である。
 どことなく猫っぽいというか……野性味のある猫っぽい? 浅黒い肌にしなやかな身体。……そしてイリオモテでマヤ。……ヤママヤー? もしくはヤマピカリャー? とにかくそんな感じじゃ。

「お〜ぅ。麻耶か。なんじゃい?」
「あ〜〜〜。……っ!?」
「妹様、気付いてなかったんですか……。今更恥ずかしがっても遅いですよ。っと、用件はそうじゃなくって。〇五式ですけど、現時点で七百丁強まで完成しましたよ。目標の八百丁は今週中に到達出来そうです」
「おお。それは重畳。最近は織田がとみにきな臭いからのぉ。……で、プレス機械はどうじゃ? あれが出来れば金属薬莢に手が届くし、軍事以外にも転用できるんじゃが」
「そっちは、まだどうにか形が見えてきたかなってところですね〜。雷管は試作品が完成してますけど……早合じゃあ真価は発揮できないんですよね?」
「んむ。中途半端な新技術を導入しても、知り尽くし使い慣れた従来の技術の方が、時として役に立つ場合がある。発想は斬新に、運用は慎重に、じゃな」
「金言、有り難くいただきま〜す。という事でご飯ですよ?」
「お? おお、もうそんな時間じゃったか」
「兄様、ボケた?」
「ぼ、ぼぼぼぼボケとらんわ!」

 いくら総合年齢が百を超えとるからって、そりゃあないじゃろ妹よ。

「ったく。で麻耶さんや、今日のご飯はなんじゃね」
「今日は薬味に葱と柚子をたっぷり使ったざるうどんですよ、おじいさん」

 カカカッ、よう言いよるわい。
 うむ、麻耶は腕よしノリよし器量よし、とまあよく出来たやつじゃ。職人が嫌いで、量産品を作る事に傾倒しており、持ち手を選ぶ傑作よりも、皆が持てる良作を好む。職人ではなく、飽くまで技術者で在らんとする姿勢が好ましい。なんとも得がたい右腕じゃ。

「ほほ、柚子は儂らの好物じゃからな。ようわかっとるじゃないか」
「麻耶様……ありがとう」
「いえいえ。しかしまあ、こうして並んでるのを見ると兄妹だってわかりますけど、声だけ聞いたらほんとおじいちゃんと孫ですね。主に技師長がじじくさいせいですよ」
「む。余計なお世話じゃい。いいんじゃよ、事実じゃし」

 いや、ほんとに。儂、中の人ジジイじゃもん。つーか、似合っとるじゃろ?

「そりゃまあ、そうですけど……(……その若さで枯れてたりしませんよーに。わたしが報われないじゃないの……)」
「ん? なんかいったかの?」
「いーえー。なーんにも」
「……むぅ」

 そして何故むくれるのか柚美よ?

 

 

 さて、それから更に時が経ち。

「明石家が壊滅とな?」

 柚原の屋敷、その自室で報告書を読んでおったところに、麻耶が凶報と共に駆け込んできたのは、ちょうど〇五式の初期生産分八百丁が揃った翌日じゃった。

「ええ……。毛利家との合戦で、国主の明石風雷とその息子三人、主要武将を悉く討ち取られたとか」
「ふむ……。となると、末っ子の風丸……だったかの? 彼が国を継いだか」
「はい」

 ……命脈絶たれたかの、これは。
 明石は、姫路一国しか領地を持たない中堅の大名であるが、その兵は精強で、かつ国主の明石風雷をはじめとする諸将は名将ぞろいであった。その名将たちを根こそぎ失ったとなっては、遠からず明石は滅亡するじゃろう。
 それはまあ、いい。乱世の倣いじゃ。問題は……。

「明石を落とした次は……丹波種子島家、かの」

 なにが。もちろん、毛利の標的じゃ。
 種子島にとって、明石は毛利に対する防波堤であった。別に頼んだわけではないが、明石が健在であるうちは、いかな毛利といえども種子島に手を出す事は難しい。
 故に、種子島にとっては明石にそうやすやすと滅んでもらっては困るのじゃ。

「ふむ……。しかしこれは……考えようによってはチャンス、かの?」
「? というと?」

 不思議そうな顔をする麻耶。まあ、経験がないとあんまりわからんもんかも知れんな、この辺りは。

「実戦証明のチャンス、という事じゃよ」

 どんなに試験で好成績を残せても、戦場で役に立たなければ意味がない。兵が上手く扱えなければ意味がない。戦場では、研究室や開発室では起き得ないような事が起こる。そんな問題点や、前線からの要望を汲み上げる機会。実戦証明の場が、降って沸いたのじゃ。

「明石の滅亡を遅らせる事で種子島を守り、かつ種子島の切り札でもある〇五式を、更に洗練出来る……というわけじゃな」
「なるほど……」

 そう悪くはない、と思うが。さて。

 

「明石にねぇ……」
「はい。儂と麻耶で明石に傭兵部隊という形で押しかけ、戦闘に参加させてもらい、〇五式の実戦証明を行いたいのですじゃ」

 思い立ったが吉日。儂は早速麻耶と連れ立って重彦殿に上申しに行った。

「明石は現在、既に第一線を退いた老兵や、少年兵を掻き集めて、どうにか軍の体裁を保ってますが、人手は圧倒的に足りてないです。武器セットで援軍となれば、まだ若い風丸殿が国主ですし、断られる事はないんじゃないかと」
「少年や老人たちの挺身に感じ入った云々、とでも添えれば幼い風丸はどうとでもなりましょうや。補佐しとるだろう老将も、背に腹は変えられますまい。抗う事を決めたのなら、皿まで食らいましょう」
「で、実戦証明ついでにオレたちの防波堤役を少しでも長く続けてもらう、と」

 ん〜、と首を回しながら儂と麻耶、二人の意見を吟味する重彦殿。

「ん〜、まあいずれはやらんといかん事だしなぁ。早い方がいいだろうしなぁ」
「では」
「お〜う。初期生産分八百丁、まるっと持ってけ」
「「ありがとうございます!」」

 よっしゃ。それじゃあ早速支度するかいの!

 

Now preparing...老爺支度中……

 

「さて」

 儂こと柚原成章を大将、西表麻耶を副将とした鉄砲隊、プラス部下から厳選した技術者、八百余名の部隊が、数十名ずつの集団に分かれて移動を開始した。さすがに八百人もぞろぞろと列を作ったら、軍事行動だと悟られてしまうからのぉ。

「技師長〜」

 ん? なんじゃい?

「その手に持ってるのは〇五式だとして……背中のはなんです?」
「ん? これか? これはの……。お守り、じゃ」

 そう答える儂の背には……三八式歩兵銃が背負われておった。

 そう。これも天の采配か、身一つ、というか魂と記憶だけでこちらに来たはずの儂じゃったが、自室として使う事になった柚原成章の部屋に、以下のものが落っこちておった。

・三八式歩兵銃×1
・九九式短小銃×1
・三八式実包×5
・九九式普通実包×5

 ……見た時は唖然としたもんじゃわい。なんつーか、これらは儂の人生そのものでもあり……同時に儂の死因でもあるからのぉ……思わず遠い目をしてしまうわい。
 ともかく、なんでこれらが憑いてきたのかはわからん。わからんが、しかしこれほど頼もしい物もない。弾丸補給はかなわんので使いどころは慎重に選ばにゃならんが……。取り敢えず今回は三八式を持ってきてある。使わないに越した事はないんじゃがのぉ……。

 

 

 ――姫路城。
 白鷺城とも称される美しい城であり、世界遺産にも登録されておる……のは、儂がおった世界での話。眼前にあるのは、今も戦場の空気を吸う現役の城砦じゃ。
 じゃが……。

「……空気が悪いの」
「そうですね……」

 如何な美しい城でも……いや、美しい城だからこそか。この燃え尽きる前の美しさのような、儚い滅びの美学のようなものを纏っているように感じられる。

「街中も、未亡人だらけで活気がありませんでしたし」
「うむ……。もしこの国難を乗り切ったとて、再建は困難を極めよう。ふむ……」

 とはいえ、やる事は変わらん。まずは取次ぎを願わんと。

 

「誰か!」

 城門につくや厳しく誰何してくる老兵。うむ、老いたりとはいえ気骨は充分。こういうところは老兵の方が頼れるのかもしれんのぉ。

「丹波の国は種子島家、技師長の柚原成章でござる。こちらは儂の部下の西表麻耶。突然無礼ですが、毛利の脅威に晒される明石家に助太刀せんがため、君主種子島重彦の命により参りました。明石風丸殿に目通り願いたい」
「な、なんと!?」

 おーおー、驚いとる。そりゃまあ、敗北が見えとる勢力にわざわざ加勢する奴なぞ、余程の理由があるか、もしくは頭がないかのどちらかじゃろうしなぁ。

「す、すぐに取り次ぎ致す! 中で待たれよ!」
「んむ、かたじけない」

 さて……名将、明石風雷の末子、風丸。どれほどの者かの……?

 

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