- k a r e s a n s u i -

戦国ランスオリキャラであれこれ

 丹波からテキサスや佐渡・MAZOに向かうには、どうしても京を通らねばならん。そして京は織田の勢力下にある。
 ……ちゅーか、京、なにわ、蜜柑を抑えられとるから、丹波から東に行こうとすると絶対に織田の勢力圏内を通らにゃならんのじゃよ。何その無理ゲー。
 まあ一つ安心できる点は、儂ら一行(二人と二体)、多分じゃが織田に面が割れとらん事じゃな。姫路におった時も、織田とあたっとったのは明石勢じゃからの。
 ……草津の外見が、織田戦に投入されたぬへと良く似ているのは、ちょっと気になるがのぉ。火鉢は外見からしてちょっと草津たちとは違うからの、妙に高い露出さえ抑えればなんとかなるじゃろ。
 あとはまあ、織田の諜報力がどの程度かにもよるが……そこは考えても仕方がないわな。

「う〜む、しかし京……思ったより賑わっとらんのぉ」

 あれじゃ、小金充じゃったころの意識からしてみれば、京といえば日本の古都、もっと栄えててもいいように思えるんじゃが……。この世界でも、足利将軍家の本拠じゃったらしいし。
 ……そこの「小金充ってなんぞ」と思った奴。あとで第一話まで来い。O☆HA☆NA☆SIしようぜ!

「あ〜、確か瀬戸物が騒いでて治安悪いって聞いた」
「瀬戸物?」
「つまりハニー」
「あ〜、なるほど……」

 ……モンスターやらなにやら、色々なものを目にしてきたが、ある意味でハニーほど常識外れな存在もないかも知れんのぉ。
 や、実際の話、あの丸三つで目と口が構成された動く瀬戸物。式神より鬼より重彦様より、あの間の抜けた姿を見た時が、一番異世界を感じた瞬間じゃったかも知れん。

「……まあそれは別にいいんじゃよ。しかし、ハニーか……」
「東海道から上洛ごっことかで京までやって来たのはいいけど、今度は新選組ごっこだかに興じてるみたいですね〜、変な羽織物を着て辻斬りしてるとかなんとか」
「ふむ……」

 厄介者で、程々に強くて魔法無効化能力を持っていて、正しく頭からっぽで、調子に乗りやすい……。

「……ぬぁあるほどね……(ニタァ」
「あ、なんか悪巧みの顔してますねー」

 まっさかー。儂はただ、新選組ごっこをするなら欠かせないイベントが有るんだYO! ってハニーたちに教えてあげたいと思っただけじゃよ? ほんとほんと、ぢいちゃん嘘付かない。

「――ま、なんにせよ、まずは宿を見繕って腹ごしらえをせんとなぁ。さーて、二階に続く長く細い階段のある旅館はどこかの〜?」

 あれ、名作じゃしね。ああでも瀬戸物だと割れてしまうか? それに長州藩士の役柄が誰になるかとかも……。まあ騒動さえ起こればいいわけじゃし、おいおい考えるとするかの。

「あ、火鉢〜、旅館探すってさ。ついでにどんなもの売ってるのかとか、世間を見てきなよ」
「はい」

 うむ、後ろでは麻耶が火鉢に何やら指導中。世話焼きは昔から好きじゃったみたいじゃし、この分なら風丸との再開がなる頃には、それなりに人間らしくなっとるじゃろうな。

「――で、お前は硬直しとらんで儂についてこいっちゅうに」
「………………………ついてく」

 あー、なんじゃろ。顔が少し赤いし反応が遅いし、動作もなんか緩慢なんじゃが。刺激の多さに処理落ちしとるんじゃろか? 実はアホの子?
 どうにも通常のぬへと火鉢の、ちょうど中間ぐらいの性質、なんじゃろうかね、草津は。通常型を高性能化する過程で生まれたのか、それとも火鉢の機能をオミットする過程で生まれたのか。どちらであれ、試作機もしくは実験機的な存在である事は……まあ考えうるかの。
 だからおつむが足りないのはそのせい、なのかも知れん。試作機特有の不具合とか。
 まあ今までは入力される情報が極端に少なかったからのぉ。あの樽ん中じゃと仮死状態もしくは冬眠状態じゃったろうし。外部からの情報の入力とその処理に慣れてないっちゅーのもあるんじゃろうがな。

「あ〜、一応聞くが……大丈夫かの? 具合はあんまりよくなさそうじゃが」
「………………………あたまぐるぐるする」

 ……やっぱり熱暴走かの?
 まあ、とっとと旅館見つけて休むとしますか……。





 翌日。麻耶にぬへ二体を任せ、儂は京中の旅館や料亭を回っておった。
 というのも、昨日泊まった旅館の女将から面白い話を聞いたんじゃよね。
 なんでも……。

「ああ新しい織田の国主様ねああ裏番だったかしらまあとにかく働きたくないでござるってごねてる信長様のかわりに治めてるらしいのよそれでねあの人が来てから織田ったらどんどん強くなっちゃってここ京も足利将軍家が治めてたんだけどねぇやっぱり魚人じゃ無理だったのよねあっさり負けちゃってでも今の方が賑やかだからあたしゃあ一向に構わないんだけどねああそうそうその国主様だけど随分と女好きであっちこっちで貴賎も問わずに食い散らかしてるのよウチみたいな旅館を貸しきってね随分っちゃあ随分な事だけどとにかく強いお人でお国だからねぇそれに後でこっそり見舞金とかも出てるみたいだし納得する人はしてるんじゃないかしら旅館としては大儲けだからしかめっ面しつつわれ先にと名乗り出たりするのよねそうそう今度もどこぞの旅館を貸しきって乱痴気騒ぎをするみたいねぇうちは選から漏れちゃったんだけど選ばれたら選ばれたで一般のお客からの受けが悪くなるから考えものだわねぇ」

 ……との事じゃ――ってかセリフ長ッ! 流石関西のおばちゃんだわい……。
 で、まあ今回重要なのはココ。

>>そうそう今度もどこぞの旅館を貸しきって乱痴気騒ぎをするみたいねぇ。

 コレね、ここ重要。
 織田の国主(代行?)の異人……ランスとかいったか。それが、京の旅館で、乱痴気騒ぎをする。
 ……これは、アレじゃよね。やっちゃっていいんじゃよね?
 乱痴気騒ぎって、要は……スーパ○フリー的なアレじゃろ? むしろ北の将軍様か?
 聞けば攻め落とした城の姫君に無体を働くわ、姫の家臣らに見せつけるわ……。いやこれ普通に鬼畜外道じゃろJK。織田の奴らは何を見とるんじゃ? それとも儂らに見えんところになにかあるのか持っているのか……。
 ま、どっちにしろそれをわざわざ見つけてまでかばってやる必要はないわな。織田にとっていい国主だったとしても、儂から見れば侵略を繰り返し女性に無体を働く輩なわけじゃし。儂も身内から見ればいい家族いい技術者だとしても、はたから見れば死の商人じゃろうからのぉ。
 ……ま、つまりそういう事で。
 『ハニ選組池田屋襲撃事件! 〜その時織田の国主は!? 蠢く陰謀の影に憑依老人の影が……!〜』作戦の始まりじゃな!



「ふむ……。探偵の真似事もやってみるもんじゃな」

 流石に国主が荒淫に耽る現場を堂々と公開するわけもなく。聞き込みしても素直に答えてはくれんかったわけじゃが……予約状況からして沼田屋っちゅー料亭で三日後、お偉いさんの貸切があるっぽいのぉ。
 取り敢えず情報だけ持ち帰って麻耶たちと相談して……その後でハニーと接触するかの。





「つまり、ハニーたちに織田の異人がおイタをしてる現場に踏み込ませて騒動を起こさせる、と」
「で、その騒ぎの隙に、一気に国境を越えてしまおうというわけじゃな」

 ぬへと【お土産】、この二つを持ったまま関所を通過とかまず無理じゃろ。確実に越境するなら、意識をどっかに向けさせた上で、山中なり不正規のルートを使用すべきじゃろ。ついでに織田に混乱、あわよくばダメージを与えられたなら万々歳じゃ。

「ん〜、まあ女性としては鬼畜には天誅!でいいと思いますけどね〜。新婚ホヤホヤの身で想像すると……うん、死ね下衆野郎☆ そして旦那さま、徐にサンパチを取り出すのは止めましょうね。嬉しいですけど」

 うん、想像するだにおぞましい。儂にはNTR耐性がない事を再認識したわい……。
 もし、などとは考えたくもないが。
 もしそうなったなら。自制は効かんかも知れんなぁ……。
 ……まあそんな不吉な想像はやめにして。

「ハニーとの接触は儂が担当しよう。麻耶は火鉢と草津を連れて、テキサスへの適当なルートを探しといてくれ。気付かれん事が最優先で、もし見つかったら、可能なら相手は消すように」
「はいはい。実地調査はお手の物ですからね〜」
「んむ。引率もしっかりな」
「わかってます。ふたりともいい子で着いてきてね」
「はい」
「………………」
「草津、麻耶の指示を聞くようにな」
「……まやのいうことをきく」

 ……やれやれ。儂の言うことしか聞かんっていうのも問題ありじゃのぉ……。まあ操作不能になるよかいいんじゃが。麻耶と二人で苦笑するのも已む無しじゃわい……。

「……ま、ともあれ」
「作戦開始、ですねー」





「がはははは!」
「う、くぅうううう……!」

 京。
 かつてJAPANにおいて支配を確立していた足利家の本拠であり、栄華の集積地でもあった。
 富と文化、そして権力が集中し、足利家が没落した今なお、やんごとなき公家たちの住まう地である。
 しかし、今は……。

「がはははは! グッドだーー!」
「はっ……はあっ……ひ、非道い……」
「父上……母上……わたくしは……うぅっ……」

 公家は、その積み重ねた歴史などが力の背景であり、物理的な力はあまり持っておらず。
 JAPANの外から来た異人――ランスにとって、非常に無防備な獲物として映ったのだろう。彼は歴史や権威など意に介さず、公家の娘たちをその圧倒的な力――武力を背景に貪っていた。
 京の街に繰り出した初日に、とある公家の屋敷に門番を切り捨てて押入り、屋敷の娘とその友人の少女に無体を働いた。
 当然怒った公家たちであるが、しかし彼らは武士を介してしか武力を行使できない。そして今や京にいる武士は織田家の者。つまりはランスの部下である。当然力を貸してくれるはずもなく、泣き寝入り状態が続いていた。
 そしてこの日も、幾つかの公家の家の娘が不幸にもランスの目に留まり、ランスが貸し切った沼田屋という料亭に召し出され、哀れその体を貪られていた。

「ふぃー、えがっだー。取り敢えず第一ラウンド終了だな」
「え……だ、第一……?」
「そうだ。この俺様がこれっぽっちで満足するわけがないのだ。一休みしたら君たちにはまだまだ頑張ってもらうぞ、がはははは!」
「そ……そんな……」 「むほほ、ランスは今日も絶好調でござるなぁ」
「おー、鈴女か。どうかしたのか?」
「ちょっと気になる事があるから知らせに来たでござるよ、ニンニン」

 絶望に打ちひしがれる娘たちを尻目に、天井裏から場違いなほどあっけらかんとした声と共に降り立つくのいちの鈴女。
 これで水を差しに来たのが男だったならばランスは怒ったかも知れないが、鈴女は美人であるし優秀でもあり、ランスとも仲が良いので特に気にしなかった。それどころか、ご機嫌なランスは鈴女も混ざりに来たのかも、などとちょっとだけ考えていたりしたのだが……。

「なんか、この旅館の周りが殺気立ってるでござる。外見たらわかるけど、人通りも妙に少なくなってるでござる」
「……ちっ。まだまだお楽しみにこれからだっていうのに……。なんだ、あの魚類の残党か?」

 期待していた色っぽい話とはまるで違う報告に、ランスは一気に不機嫌になる。せっかくのお楽しみタイムを邪魔され、しかもそれが自分に逆らう奴らの仕業なのだから、その怒りもひとしおである。

「や、それはたぶんないでござる。あの魚類、ホントに人望がなかったから、足利家のために、なんて人たちはもういないと思うでござる」
「ふん、まあどこのどいつだろうと、俺様に逆らう奴には容赦しないぞ」
「ん〜、でも今ここにはランスとシィルと鈴女の他には、二、三人しかいないでござるよ?」

 ランスの乱行は周知の事実ではあるが、それでも殊更宣伝したいわけではない。むしろ隠しておきたいくらいである。
 なので護衛は必要最低限の人数しかいなかったのである。
 とはいえ。

「ふふん、俺様にかかれば雑魚が何人いようが変わらないのだ」

 そう大言壮語するだけの実力を持っているのがランスという人間である。それに鈴女も生半可な強さでは叶わない実力の持ち主であるし、シィルも長くランスと旅してきただけあって、相応の力を有している。
 ランスのパワーに鈴女のスピード、シィルの魔法が揃っていれば、兵の五十やそこらなら怖くもなんともない。
 しかし――。

「ら、ランス様! 大変ですっ。外、外を見て下さいっ」
「うるさいぞシィル。俺様に逆らう馬鹿な奴でも来たのか?」
「や、奴っていいますか……」
「およ。ランス、こりゃあちょっと面倒かもしれないでござるよ?」
「なぬ?」

『アイヤーーー! ごようあらためだぞーーー!』
『ハニホーーー!』

 響くマヌケな声の発生源。そこには三十体ばかりのダンダラ模様の羽織りを来たハニーの集団が行進していたのである。

「は、ハニーだとぉ?」
「ど、どうしましょう。ハニーには私の魔法、効きません」
「お前が役に立たないのはいつもの事だろう」
「ひんっ……」
「しかし……ちっ、なんであんなにいっぱいハニーが来るのだ」
「あ〜、なんかみんなおそろいの衣装を着てるでござるよ。ランス、確か前にハニーが自警団ごっこしてるって3Gが言ってなかったでござるか?」
「ん……そういえばそうだな。確か……」
「新選組ですよ、ランス様」
「うるさい、今俺様が言うところだったのに邪魔するな」
「え、えぇーーー……」

 聞いてるだけだと緊張感がないが、魔法を無効化するという特徴を持つハニーの群れが相手となると、少しばかり面倒な事になる。シィルの魔法攻撃が無意味になってしまうのだ。

「でも、結構な騒ぎになってるでござるからなぁ。そのうち織田の軍が鎮圧に来るでござるよ。ランス、それまでどうするつもりでござるか?」
「ふんっ。決まっているだろう」
【おっ、やる気だな相棒】

 ずらりと抜き放たれたるは魔剣カオス。ランスと共に数多の人間や魔物、魔人たちの血をすってきた刀身が、ギラリと輝く。

「俺様のお楽しみタイムを邪魔したのだ。俺様自らかち割ってやるわこのハニワ共がーーー!」
『アイヤーーー! 突撃ーーー!』

 ランスの怒号と同時に、沼田屋に三十体のハニ選組が押し入る。
 今ここに、沼田屋事件が勃発した!



……まあ今頃はそんな感じじゃろうけど、本筋とはあんまり関係ないのでカットじゃカット。どうせガシャパリーン、ハニは死んだ(スイーツ)ってなるだけじゃろうし。
 というわけで、儂らは今京とテキサスの国境にまで来ております。
 あのあと、儂は今日の街でうろついとったハニーと接触を図った。市中見廻りとかでうろちょろしとるから見つけるのは簡単じゃったしな。
 しかし奴らにもなんか階級みたいのはあるんかの? 他とはひと味違いそうなハニーが一体紛れ込んどったんだが……。まあそいつに話しかけたわけじゃ。



「もし、そこな粋な羽織りのハニーさん」
「む? なんだお前は」
「うむ、儂は通りすがりのジジイじゃ。ところでそなたら、何やら新選組を名乗っているらしいですな」
「そうだぞー。悪いことしてる奴がいたらやっつけるんだぞー。あいやー」

 うん、自分たちの存在が迷惑だって事には全く思い至らないのな。なんて幸せな脳みそなんじゃろう……脳みそ? ……ある、のか?
 ……まあええわい。

「なるほど……。しかし新選組を名乗るならば、外してはいけないイベントがありますぞ?」
「あいやー。なんだそれ。教えろよ」
「うむ、それは悪巧みをしている奴らの集まる旅館を襲い、そいつらを懲らしめる事じゃ! これなくして新選組気を語ろうなぞ片腹痛いわ!」
「あいやー。そういうものなの?」
「そういうものじゃ。しかも二日後には沼田屋という旅館で、ランスという異人が美人や可愛い女の子を集めていじめるらしいぞい」
「なに? それは沖田の身が危ないかも知れんな……」
「な、なんだってー。あいやー、それは大変だ。近藤さんに聞いてみないと。ジイさんありがとー」

 はにほー、って行っちゃったよおい……。簡単に釣れたなぁおい。
 しかし近藤に沖田って……。
 まあいいか。



 以上回想終了。こうして儂らは無事にテキサスへの侵入を果たしたのでしたー。
 まあお陰で織田に強力な女武士をくれてやる結果になったぽいのが反省点じゃが……まあそれはええわい。
 あとは上杉領に渡って話をつけて……これからが正念場じゃなぁ。

「……頼りにしとるぞ、麻耶」
「――はい、旦那さま。火鉢に草津も、よく旦那さまを支えてね」
「はい」
「…………ささえる」

「……ん。ありがとうの」

 ……一人じゃないってのはええのぉ……。
 一人残って頑張っとる柚美のためにも、早く終わらせて帰ってやらんとなぁ。

 

戻る
(c)Ryuya Kose 2005