- k a r e s a n s u i -

戦国ランスオリキャラであれこれ

「丹波よ、儂は帰ってきたーーー!!!」

 ズダァーーーン!!!

「んむ!(b」
「ん!(b」

 なんというグッドタイミングでの発砲! 麻耶め、いい仕事をしよるわい。サムズアップも誇らしげじゃ。
 まあそういうわけで、戻ってきました種子島。先発隊はとっくに到着していて、得られたデータをフィードバックしとる頃じゃろうな。

「まあ、そっちに顔出すのは後でもいいじゃろ。取り敢えず、重彦様んとこに顔出さんとなぁ……。色々伝える事もあるしのぉ」

 今回の成果はもちろん、ぬへの事とか……あと麻耶との事とか、報告する事はいっぱいあるからのぉ……。

「んじゃ、取り敢えず重彦様んとこに行くぞい」
「重彦とは誰ですか?」
「ああ、儂の上役っちゅーか、ま、この国で一番偉い人じゃよ。あんまり堅ッ苦しいお人じゃあないが、まあ一応行儀よくはしといてくれ。草津もな」
「わかりました」
「……わかった」
「ん、では行くかの」

 そして儂らは歩き出す……。
 思えばこの時、既に異変は起きておったんじゃ……。
 何故この時に気付けなかったのか……。儂はその事を後に後悔する事となる……ッ。





「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「めでたいな」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとうございます」
「……おめでた」
「おうっ! めでたいなっ!」
「ありがとう……ってなんじゃこの展開!?」

 儂、補完されちゃったんか!?
 あと草津よ、その言い方だとちょっと意味合いが変わってくるからの?
 というわけで、評定の間に入った途端、儂らを出迎えたのは万雷の拍手と紙吹雪と祝福の言葉でした。なんぞこれ。

「なにっておめぇ、祝言の前祝いってやつだろ」
「……What?」

 え、なにそれ。なんで知って「計画どおり……ッ」貴様か麻耶ぁあああああああああああ!!??

「なんか口数少なくて微妙にニヨニヨしてると思ったらこういう事か!」
「うれしはずかし不意打ち作戦ってやつですねー。びっくりしました?」

 するもしないもありゃせんわ! 中の人そのままの年齢だったら心臓止まっとったぞ!

「びっくりしたのは俺らもだってぇの」
「重彦様」
「麻耶からの重要な知らせってぇのがお前さんとは別口で届いててな、一体何事だぁって封を開けりゃあ『私たち結婚します』の一言だけ。そらぁ度肝を抜かれるってモンよ。色んな意味でな」

 あ〜……確かに……。

「つーか、まだ正式に決まったわけではないんですが……」
「あン? 俺が駄目だっつーとでも思ってたのか? それともなにか、お前さん、結婚する気がないとでも?」

 うぐっ……。皆の視線が突き刺さるんじゃが……。
 そして麻耶、ニヤニヤしてるけど目が笑ってない、笑ってないぞい。
 ……つーか、うん。酷く真剣な眼差しじゃね。何気に両手も祈るように組まれてるし。
 あ〜……。年貢の納め時かのぉ……。ン十年も前に先立った婆さんや、勘弁しとくれよ……。

「あ〜……。まあ、その。そも、ここに来たのはご報告と許可を頂きに来たわけでして、推して知るべしといいますか」
「ん〜? 意味がよくわかんねぇな、はっきりと言えやはっきりと」

 くっ……ニヤニヤしやがってこんにゃろめ……ッ。
 ええいままよ、中の人の人生二度目のKIYOMIZU☆DIVEじゃ!

「麻耶ーーー! 儂じゃーッ! 結婚してくれーーーッ!!!」

 ………。

 ………………。

 ………………………。





 鳴り響く祝砲とか火事場で鍛えられた男衆からの手荒い祝福とか。
 らしくもなく顔を真っ赤にして泣きながら笑ってる麻耶と、それを見てますます盛り上がる観衆……。
 いやはや、なんとも怒涛のようなじかんじゃったわい。
 結局、あのまま宴会に突入して日中から夜まで呑めや歌えの大騒ぎ。女衆に酔い潰されて、幸せそうな顔で眠りこける麻耶を負ぶって、漸く家にまで帰り着いた次第じゃ。

「あ〜……取り敢えず火鉢と草津。お前さんたちは向こうの空き部屋を使ってくれ。今日はもう遅いし、説明やらは明日でいいじゃろ。自分の荷物とか、持っていっといてくれ」
「わかりました」
「……持っていっとく」
「ん。あとは柚美、麻耶の部屋に布団敷くから手伝っとくれ」
「うん」

 うん、ここ柚原家の屋敷なんじゃが、当たり前のように麻耶の部屋があるんじゃよね……。いつの間にか占拠されてたというか。まあ、姫路に行く前から親しくはあったからのぉ。
 ……つーか、今考えたら出張先で色々発展しすぎじゃろ、儂ら。

「兄様、準備できた」
「おお、すまんな。よっ……こいせっと」

 扱い方も心得たもんじゃしの、そぉいとばかりに麻耶を布団の上に放り出す。ぼすんって、ちょっとばかり痛そうな音じゃが……ん、もぞもぞ動いて居心地のいい場所を探す辺り、大丈夫そうじゃな。

「やれやれ……。柚美もすまんかったの、帰ってきて早々、こんな騒ぎになってしまって」
「ちょっと……びっくりした」

 麻耶の枕元に二人並んで腰を下ろす。 あ〜、ちょっと疲れとるね、こりゃ。まあ柚美も準主役みたいなもんじゃし、囲まれとったからのぉ。

「まあ……急な展開になってしまったしのぉ……。置き去りにして色々決めてしまったのは、すまんと思っとるよ」
「ん……ちょっと、寂しかった」

 言って、身を寄せてくる柚美の頭をかいぐりかいぐりしてやる。身内贔屓かも知れんが、えらく肌触りのいい髪じゃのぉ。
 儂にとっての始まりはともかく……今では自慢の、大事な妹、じゃな。

「寂しかったけど……今はこうしてちゃんと一緒にいてくれるし……なにより」

 眼前で眠る麻耶に、優しい視線を向けて。こんな表情が出来る娘だったのかと、少しばかり驚いてしまう。

「麻耶の事は好きだし……家族が増えるのは……とっても嬉しい」
「……ああ。ああ、そうじゃな。嬉しい事じゃよな」

 柚美は、考えてみれば父を事故で喪ってまだいくらも経っておらんのじゃよな……。儂も、婆さんに両親、数多の戦友同僚を見送ってきたが……。
 娘の結婚やら孫の誕生やら、家族が増えるっちゅーのは嬉しい事じゃったわい。

「火鉢に草津もおるしな、これから賑やかになるぞぃ」
「……草津は見ててなんだか可愛い……かも」
「そうか、まあ仲良ぅしてやってくれ。ああ、もちろん柚美とも、これからも仲のいい兄妹でいさせてもらうぞい」
「ん……。ありがとう、兄様」

 ……ま、たまにはこういう穏やかな家族の時間がってもいいじゃろ。
 いまだ世情は不安定で、いつ永久に別たれるかもわからんのだからのぉ。
 二人っきりの家族最後の夜、今夜くらいは兄妹水入らずで過ごすとしようかの……。





 取り敢えず。
 南部様が媒酌人となって、あれやこれやと準備は進んで祝言の席。
 色黒の麻耶は白無垢が似合わないからあれこれと恥ずかしがっておったが、まあそりゃあ見事な艶姿じゃった。普段のキャラがあんなんじゃから、着飾って頬を染めて借りてきた猫みたいになっとる姿は、うむ。ギャップ萌え?
 とにかく、自分が幸せ者だと断言できるくらいの花嫁っぷりじゃったのぉ。
 まあその後の宴会はえらく盛り上がったし、その後の初夜――っても全然初じゃないんじゃが――なんかは、そりゃもう

 キングクリムゾン!

 とまあこんな感じじゃったわけじゃ。
 いやあ微に入り細に渡って語ってしまったわい。舞いあがっとるのぉ、自重、儂自重。



 ……まあ、幸せ気分でいられるのはほんの三日ほどじゃったわけで。
 毛利と織田、好戦的な二国と国境を接しているこの状況は、正直崖っぷちもいいところ。鉄砲というアドバンテージはあるものの、国力の差は歴然としておる。
 直接戦火を交えれば敗北は必至。となれば、その前に何とか外交で先んじねばならん。

「というわけで、上杉に行ってくるぞい」
「当然わたしもセットです(キリッ」

 や、それは単に新婚早々の単身赴任は不憫との事で、重彦様が気を使ってくれたんじゃが。まあ明石での実績も込みなんじゃろうけど。

「仕方ない……仕方ない事だけど……」
「まあそう膨れないでくれぃ。柚美には、別の大事な仕事が与えられとるじゃろ? 連れてくわけにもいかんのじゃよ」

 そうなんじゃよなぁ。
 柚美は種子島有数の射手、この窮状でその技術を遊ばせるのはもったいない、との事で、前線には出ないまでも、姫路にて実戦経験を積んだ精鋭によって構成された教導部隊から薫陶を受け、ゆくゆくは柚美自身がその部隊に入る事が内定しておるのじゃ。
 柚原家は重臣じゃし、状況が状況じゃから仕方のない事ではあるんじゃが……柚美自身も割とやる気じゃし……遣る瀬無いのぉ。

 まあ柚美が戦場に出るような事態にならんよう、儂が頑張ればいい話でもあるわけで。
 今回は自国の備えが必要じゃし、戦争しにいくわけではないので、大仰に部隊を率いていくような事はない。重彦様直筆の書状と、手土産の試作版〇五式、副官というか副使として麻耶、護衛にぬへ二体。それに“お守り”と、まあ明石の時と比べれば身軽なもんじゃ。時間との勝負でもあるわけじゃしの。

「浅井朝倉を仲介役にして上杉と連絡を取り、窮状を訴え、少なくとも織田に対する押さえになってもらう。理想は浅井朝倉や北条を含めて織田包囲網を構成する事じゃが……まずは協力を取り付けねばならんからの。……だからそれまで。留守を頼むぞ」
「……はい。兄様」

 という事で、結局一週間も留まらずに、儂らは浅井朝倉が治めるテキサスを経由して上杉氏のMAZO、佐渡を目指して旅立ったのじゃ。



 ……後に思う事になるのじゃが。
 この時、無理にでも柚美も一緒に連れて行けるように手配しておったら……。
 今更言う事ではないとはわかっておるが……それでも、拭いがたい苦い記憶じゃ……。
 あの出来事がなければ、或いはあの男と親しくする機会もあったのやも知れんが……まあ、戯言じゃな。

 

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(c)Ryuya Kose 2005