- k a r e s a n s u i -

戦国ランスオリキャラであれこれ

「柚原さまー! お見事でしたよー!」
「すごかったよー! おにいちゃーん!」
「鉄砲†無双! 凄かったぞー!」

 キラッ☆

 おおぉうぅ……止めてたもれ! そんな澄んだ瞳で儂を見るのは止めてたもれ!

 あ……ありのまま、今起こっている事を話すぞい!
『通夜みたいな雰囲気だった姫路に戻って来たと思ったら、いつの間にか祭りの会場みたいになっていた』
 な……何を言っているのかわからんと思うが儂もどうなってるのかわからなかった……。頭がどうにかなりそうじゃった……わけでもないがの。
 いまや夫息子に先立たれた未亡人、祖父、父、兄を失った幼子ばかりの明石。重苦しい雰囲気になるのは無理もなく……そこに久々の明るいニュースが入れば、藁にもすがる思いで飛びつくのも、まあ致し方のない事よの。

 じゃが……そんな澄んだ目で儂を見るのは止めて欲しい……ッ。その無垢な目が、目がぁああああッ!



「柚原殿! 聞きました! 大活躍だったそうですね!」
「おほぉううう……」

 もう止めて! 儂のSAN値はもうゼロじゃ!

「おほ?」
「おほ……めに与り光栄ですじゃ……」
「とんでもない! 僕の知る言葉では言い表せないくらいです!」

 苦しい……今のは自分でも苦しいと感じるわい……。
 と、とにかく。国主たる風丸殿からもお褒めの言葉をいただいて。苦しい国庫から報奨金まで捻出して頂いてしまったわけじゃが……。

 

「素直に受け取れるわけがないじゃろうに……」
「子供の純真さですねー。技師長には欠片も残ってないですから、眩しかったんじゃないですか?」

 儂、酷い言われようじゃの……。まあ事実じゃが。

「やれやれ……。報奨金は、城下の住民に還元してやっとくれ。貰った金じゃ、どう使おうが儂らの勝手じゃしの」
「了解です。偽善もまた善也、ですか?」
「何もせんよりはのぉ」

 そしてその行為がまた評判を呼んでしまう、と……。これなんて負のスパイラル?

「別に負じゃないんじゃないですか?」
「……罪悪感がつのるって事じゃよ」
「別に結果論でもいいと思いますけどねー。お偉方や武士階級はともかく、普通の民草は結果として生活の安堵が為される事こそが大事だと思ってますよ」
「……そんなもんかのぉ?」
「さあ?」

 ここできちんとフォローしてくれないのが麻耶クォリティ!

「でも、別に教える義理も必要もありませんし……向こうが勝手に好意を持ってくれてるんだから、いいんじゃないですか?」
「……ほほ。お前さんなんぞに諭されるようじゃあ儂もまだまだじゃな」
「にゅふふ。でもわたしもまだまだですから。……不束者ですが、二人三脚、末永くお願いしますよ、旦那様」
「んむ。こちらこそ、じゃ」

 ………。
 ……ん?

「言質とったり♪」
「孔明ーーーっ!?」

 

 

「……なにか、疲れていませんか? 柚原殿……?」
「……お気になさらず」
「は、はぁ……」
「にゅふふ♪」
「(´・ω・`)」
「???」

 疲れているのは実戦証明とその検証のせいです。麻耶の機嫌と肌の色艶がうなぎ上りなのとは関係ありません。夜の合戦とか知りませんったら知りません。

 さておき、あれから二週間。何度か合戦に出陣し、悪天候時の運用試験、実戦下での耐久性、銃剣装着時の照準のずれとその修正、銃剣で近接戦を行った際の銃身の耐久性、歪みのチェックなどなど。多岐にわたって試験が行われた。
 現地改修で間に合うものは間に合わせ、大幅な改良が必要と認められたものは文章にまとめて本国へ伝える。帰国する頃には改修が施された第二次生産品を手にする事が出来るじゃろう。

「ところで……戦況はいかがなっておりますかな?」

 で、同時に重要なのが戦況じゃな。いつ区切りをつけるかの目安にもなるし、場合によっては同盟などの動きにも出ねばならんじゃろう。
 勿論その判断は国主である重彦様がなさるわけじゃが、その判断材料はなるべく多く提供して差し上げねばならんわけじゃし。

「……お陰で、なんとか持ち堪えています。襲撃の頻度も、鉄砲を警戒してか少なくなっていますし。鉄砲様々、種子島様々です」
「左様ですか……」

 んー、鉄砲を恐れているとなれば、抑止力にはなりそうじゃの。なんせ種子島は鉄砲の本家本元。量と、なにより質に於いて他の追随を許すものではない。
 ん〜、第二次生産がある程度進むまで……を期限とするのがいい、かの? それ以上は弾薬の消費が負担になりかねんし。
 しかし……。

「これからも、どうか力をお貸しください、柚原殿!」

 このまっすぐな瞳、心根。儂の、種子島の思惑も知らず、老臣たちが既に敗北を覚悟しているとも知らず。ただ姫路を治める明石の当主としてあらんとする、この少年。
 なんとも、やりきれんわい……と、なんだか騒がしいのぉ?

「も、申し上げます! 毛利が……毛利元就が! 手勢を率いて自ら攻めてまいりました!」
「――ッ!」

 おお、思いっきり引き攣りよったわ。そりゃそうじゃろうなぁ、父と兄らを屠った仇敵が攻めてくるんじゃから。
 しかし……嬉しくはないが、これは好機じゃのぉ……全然嬉しくないが。二回言うくらいには嬉しくない。

 この世界に於いても、基本的に戦いは数じゃ。兵法の基本は、敵より多くの兵を集める事にある。
 しかし、時折そういった理屈を超越する化け物が、結構いたりするんじゃよ、この世界。まさしく一騎当千とでもいうのか。儂のおった世界で伝説として語られるような、英雄と称する他ないような輩が。

 この世界には、レベルというものが存在しとる。ゲームとかでよくある、強さに直結するようなあれじゃ。四十、五十を超えるとかなりの強さになるんじゃが、そういった相手には生半可な数では到底対抗できんし、しても被害が大きくなりすぎてしまう。
 敵将、毛利元就はそういった存在なんじゃな。しかもどうやら妖怪に呪いをかけられたらしいんじゃが、そのせいで偉業の巨躯となり、もう正直冗談みたいな無敵ッぷりじゃ。
 ……儂? 儂のレベルは二十一、才能限界は三十四じゃ。これでもマシな方なんじゃぞ? 因みに麻耶はレベル三十の限界四十五じゃ。種子島でも有数のレベルの高さなんじゃぞ。

 さておき。好機というのは、この鉄砲という兵器が毛利元就のような化け物クラスの敵に対してどこまで有効なのか、という試験が行えるからじゃな。正直、将が軍を破る、なんて馬鹿げているとしか思えん事が起き得てしまうのがこの世界。さてはて、一体どこまでやれるものやら。

 



おぉおおおうぅ……。あれが子島の援軍かぁあ」
「ああ。きくが調べてきたから間違いないだろう。表向きは傭兵という事になっているようだが」
「ほぉおおうぅ……。てるぅ」
「なんだ?」
「この間……戦っみてどうじたぁあ?」
「ふむ……。個人の武勇はわからんな。軍としても、正直武器の強さしかわからん」
「そかぁあぁ……。なら、回ではっきりさせるとするかのぅ……」
「くくっ、あまり一気にもみ潰すなよ? 元就」
「さてぁ……。それで死ぬ度なら、それまでとい事じゃあぁ。おぉおう、おめぇらぁあ、いってこぉぉぉおおい!」
『イッヤッフーーーーー!!!』

 

「おー、来たわい来たわい。……なんかいつもより活きがいい気がするのぉ」

 やっぱ大将がいると違うのぉ……。

 今回の合戦は、こちらはかなりの戦力をつぎ込んでおる。なんせ毛利元就が出張っとるんじゃ、生半可な対応ではどうにもならんわい。完全無視も一つの方法じゃが……その場合、領内深くまで侵攻を許すじゃろうし、そうなれば民衆の動揺が大きすぎるじゃろうからのぉ。これ以上動揺させては内部崩壊してしまうわい。
 投入された兵力は、朝比奈殿、安部殿の武士隊千二百の他に足軽隊五百六十、弓隊が二部隊千百の、総数二千八百六十。儂と麻耶の率いる鉄砲隊八百……から不具合が見つかったり劣化したりで本国に送り返した百八十を除いた六百二十。これを加えれば、三千四百八十と、儂らが姫路に来て最初の合戦の時の約二倍の兵力じゃ。
 対する毛利は……あのデカブツが元就、じゃの。それと……毛利てるかの、あの錬度の高い足軽隊は……。それに武士隊も幾つか……彼我の戦力差は一対一.五といったところかの。

「技師長〜、準備出来ましたよー」
「おうおう、それじゃあ鼻っ面に一発叩き込んで、後は上手い事明石勢を盾にしてな」

 本来なら、これまでのように伏兵として潜んで、横撃を食らわせる、という戦法を取りたかったんじゃが……。何故か知らん、毛利の忍者部隊が来ているらしくてそれが叶わなんだ。なんかマークされてしまったらしいのぉ……。マジ鬱じゃわい。身体のスペック違うっちゅうに。

「ま、安部殿と朝比奈殿がおるからの、化け物を引きずり出すまでは頑張ってもらうとするかい」

 元就とてるの部隊を引き受ける代わりに、他を受け持ってもらう話になっとるからのぉ。鉄条網に柵と、他にも仕掛けてあるんじゃ、気張ってもらわんとな!

 

「大将ーっ! 明石のジジイ共、粘りやがるでヤンス! このままだと埒があかないでヤンスよ!」
「おぉうぅ……。思ったよ粘るのぉお」
「元就。そろそろ行かんか?」
「そうゃのぉおお……」

 

「――ッ! なんじゃ、このプレッシャーは!?」
「あ〜、元就が動きましたね。てるも同じく動きますよ」

 突っ込んではくれませんか、そうですか。そりゃ元ネタ知らんもんな、当たり前か。
 しかしまあ、戦場の空気が変わったのは事実、こっからが本番じゃ。

「総員、強装薬に変更! 然る後に第一小隊前へ! 第二・第三小隊は所定の位置にまで下がっておれ! 狙うは元就の顔面、出来るならば目玉じゃ! 弓隊は逆に元就以外を狙うのじゃ! 奴に弓は効かぬ!」
「あと、第一小隊が下がったら、例の奴、頼みますよー」
『応!』

 で、じゃ。なんつーか、前方では雨あられと降り注ぐ矢をものともせずに突っ走る毛利元就がいるわけで。あの片目とか、スーパーアーマー具合とか、どことなく……。

「……バーサーカー?」
「は?」

 んむ、電波ゆんゆんじゃ。
 さておき。そろそろタイミングじゃな。

「ひるむなよぉ、あんなもん熊だと思え! 無茶だとは思うがそう思うんじゃ!」

 あの巨体が自分目掛けて突っ込んでくるのは、うん。正直悪夢じゃが。

「ここで止めねば更なる悪夢が待つだけじゃ! 踏み止まれぃ!」
『……応ッ!』
「いい返事じゃ! では三段射撃……今じゃ、撃てぇえええぃ!!!」

 六百二十を三つの小隊に分け、それぞれを二つの分隊に分け、さらにそれらを左右二つの班に。
 十字砲火と射撃速度を堅持しつつ、かつ後退がしやすいように。これなら相当な嫌がらせじゃろ!

「おぉおおぉおおっ?」

 ビシバチ、と激しい音を立てて鉛玉が顔面にぶち当たる! これなら眼球にも幾らかはヒットしとるじゃろう! 

「カカカカッ……! 痒のぉお!」
「ってほんとただの嫌がらせじゃな!? ええい、第一小隊は後退! 同時に火矢放てぇい!」

 第一小隊がおった辺りには、藁や襤褸布など可燃物が敷き詰めてある。放たれた火矢は瞬く間にそれらに引火して、毛利元就の行く手を……。

「……まあ、阻めんよなぁ」

 なんか平気で突っ切ってきますが。ナパームとか、もっと高温の炎なら出来たかもわからんが……まあこれで一般兵の足止めは出来るじゃろ。

「しかし……こりゃあ効果薄いのぉ」
「ですねー。ほんとバケモノですね。どーします? 例のアレ、やっときますか?」
「ん、頼むぞい」
「ほいほい」

 その後、第二小隊の攻撃もあったが……ほんっと効かんのな。火矢も同様に放ったが、これまた無視。むしろその様を見て明石勢の士気が下がっとるようにも思う。

「ったく、ふざけとるわい! 第三小隊、お前さんたちが頼みじゃ! 上手くやるんじゃぞい!」
『応ッ!』
カカカッ! 効かぞぉおお、そんなモはぁあ!」
「うを、もう来よった! 撃てぇええい!!!」

 三度の斉射! これまた顔面目掛けて百を超える鉛玉が殺到するも、そこは元就も慣れたもの、左手をかざすだけであっさり防ぎよる!

「グワッハハハハッ!」
「ちぃっ! 火矢、火矢を放て!」
「馬鹿の一つ覚えじゃのぉお! 効かんぁあ!」
「……さて、それはどうかのぉ!!!」
ぉおおぅ!?」

 ひょうひょう、と火矢が空を切り裂き飛来する音を聞き、儂は――耳を塞ぎ口を開けて地面へとうつ伏せに! つーかあのバケモノを前にしてこの姿勢はマジ怖いぞい!!!
 じゃが、しかし!

「カッカカカカ! 温い温い!」

 そうほざく元就。その身体に、目の前の地面に火矢が降り注ぎ。

 

 ずがぁああああああああん、と一丁上がりじゃ!

 

「もっ……元就ぃいっ!?」

 そりゃ悲鳴も上げるよなぁ……。目の前で父親が爆発に巻き込まれたんじゃから。
 銃撃による効果が挙がらないとわかった時点で、儂は麻耶を通じて各小隊の連中に、第三小隊が請け負う攻撃エリアに、第二、第三次攻撃の時のための弾薬を集めさせておいたのじゃ。数個の薄い木箱に詰め込んで、簡易爆弾を用意したわけじゃな。第二小隊の攻撃エリアに仕掛けなかったのは、元就を油断させるため。これで無傷じゃったら南無三じゃ!
 しかし、今のでどの道儂らは継戦能力をほとんど喪失したわけじゃ。引き潮じゃな。

「総員、撤退準備! 明石勢にも伝えよ!」

 伝えながら、儂は装備を持ち替える。麻耶と同じ〇五式試作ライフリングカスタムから、切り札その一、即ち三八式歩兵銃へ。刀鍛冶に作らせた〇五式試作銃剣を着剣し、ボルトを引いて弾を装填し、黒煙の向こうを見通すように睨み付けて。
 ――その中に、のっそりと動く巨体を見つけた。

「いやはや、じゃわい……」

 かすかに肉の焼けるような臭いがするから無傷ではないんじゃろうが……それでも呆れた耐久力じゃ。

「じゃが、これで士気は維持出来「おぉおおおおおおッ!!」どわあっ!?」

 目の前を掠めたのは、掠めたのは……刃物で出来たハタキ? つー事は。

「毛利てるか!」
「貴様! よくも元就を!」
「いや死んどらんがな!」

 銃剣で打ち払い、一旦距離をとる。つーかさっきの一合でわかったが、こいつ儂とはレベルが違いすぎるわい!

「思えば以前から卑怯な小細工ばかりしおって!」
「足りんものを補うのは卑怯じゃないじゃろーが! 知もまた力なりじゃ!」

 突進してくるところ目掛けて、撃つ! がしかし!

「避けよったか!?」
「馬鹿めが! この距離で鉄砲なぞ!」

 勝利を確信したか、凄惨な笑みを浮かべて得物を振りかぶる毛利てる。しかしじゃ!

「ところがどっこい、そうはいきません……!」

 ぐにゃぁあ。じゃなくてぎちょん、とボルトを引き次弾装填!

 ぱぁん、と乾いた音が響くのと、驚愕に目を剥きつつも身をよじり、急所を避けた毛利てるの左肩から血煙が上がったのは、ほぼ同時じゃった。

 

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(c)Ryuya Kose 2005