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戦国ランスオリキャラであれこれ

「僕が国主の明石風丸です」

 そういって、まだ元服を迎えたばかりの少年は、内心の不安や緊張を押し隠して、堂々と儂を出迎えた。うむ、微妙に膝の上のきつく握られた手が震えておるのは見なかった事にしてやろう。

「種子島鍛冶師集団及び技師衆筆頭、柚原成章でございます」
「お名前は姫路にまで届いています。数々の新技術や概念を発明する、種子島の知恵袋とか。お会い出来て嬉しいです。で、そちらのお方は?」
「妻の麻耶です」
「部下の西表麻耶ですじゃ。今の妄言は無視して下され」
「え? あ、はあ……」

 ……まあ、会話のペースを握ったという事で。

「ごほん。……で、今回参りました理由ですが」
「はい。報告では、当家に助太刀していただけるとか……」
「はい。種子島家も、毛利の脅威に日々脅かされているのは同じでございます。なれば、力を貸したいと思うのは当然の事。しかも、この未曾有の国難にあって、老若男女が結して毛利に立ち向かわんとするその姿、この成章感じ入ってございますれば。君主重彦に嘆願し、部隊を率いて参った次第」

 ……ま、概ね事実を言っとるからの、嘘ぢゃない。
 学徒動員を思い出して、感じる物があるのも事実。どう感じたかは……わからんが、の。部隊を率いてやってきたのは、見てのとおり。ただ、目的は飽くまで実戦証明のためであり、それを伝えていないだけじゃ。

「……ありがとうございます! このご恩は決して忘れません!」

 そう言って、その澄んだ瞳に涙すら浮かべて謝辞を述べる風丸殿。
 ……なんかこう、罪悪感が……。麻耶もなんか難しそうな顔をしとるわい。

「微力を尽くしますじゃ」

 ま、それをおくびにも出さん程度には、儂の面の皮は厚いんじゃがの。

 

 その後、種子島軍としての参加はさすがに無理なので、傭兵団として臨時に召抱えてもらう形になる事、現場での指揮権はこちらが持つ事、兵糧や宿場の手配についてなどを話し合い、風丸との面会は終わった。
 こっからが本番じゃな……。

「さて……柚原殿」

 ほれ、早速来たわい。先代、先々代の頃から明石に仕えていたという、元家老。実質今の明石を支えているといっても過言ではない二人、安部平三と朝比奈百万じゃ。

「まずは、援軍に来ていただいた事。改めて感謝いたしまする」
「いえいえ、例には及びませぬ。朝比奈殿の忠義ぶりに感じ入「失礼じゃが」――はい?」

 儂の言葉に割り込んだ安部殿。顔に刻まれた刀傷の跡と皺。そこには経験が染み込んでおるのじゃろうな。この程度の上辺の言葉なぞ、あってないようなもの、か。

「種子島は技術者の家。ただ義のみで動くはずはありますまい。この老骨、これでも酸いも甘いもそれなりに知っておりまする。腹を割ってお話願いたい」

 ……ほほ。よいのぉよいのぉ。

「……しからば。此度の派兵、目的は新兵器の試験にありまする」
「新兵器……。巷で噂の鉄砲とは、また別の物ですかな?」
「はい。正確には、別物の性能を誇る鉄砲、という事になりますが」
「なんと……」

 平三殿も百万殿も驚きの表情。まあ、それはそうじゃろうの。初期の鉄砲でさえ革命的な発明だったんじゃ。それとは別物の性能といわれれば、沈着な老人といえど衝撃は受けよう。

「飽くまで目的は新兵器の試験であり、我々はそれに即した行動をとらせていただきたい。また、試験が終わるか、試験続行が不可能になった場合は撤収させていただきたい」
「……押し売りに来た割に、ずいぶんと身勝手な言い草ですな」
「自覚しております。しかし……断るほど、明石に余裕がありますかな? それに、明石が滅べば、毛利の矛先は種子島に向きましょう。我々にとっては一石二鳥の機会。明石を支援する意図も、確かにあるのです。ここは一つ、互いに利用しあうが一番と思われますが」
「………」

 ……立場の強い者が好き勝手する。儂は、その行為を好かん。される方にしてみれば不愉快極まりないからじゃ。しかし、快不快を別に、打てる手は打つべきである。そしてそれは、明石にとっても同じ事。

「……あいわかり申した」

 苦渋を僅かに覗かせつつも、朝比奈、安部両者共に承諾の言葉。……若い風丸相手であったならば、こうは行くまいの……。

「……風丸様には、聞かせとうない話ですな……。伏せておいていただき、かたじけない」
「なんの。若い者が必死に気張っておるのです。何とかしてやりたいという気持ちも、嘘ではありませぬ故」
「そういう柚原殿も、十二分にお若いのですがの」
「おっと、これは失敬。爺むさいと常々言われておりましてな……」
「はっはっはっはっは! いやいや、柚原殿は下手な年寄りよりも年寄りらしいですな。はっはっは!」

 むう、ジジイ同士波長が合ってしまったのか……話しやすくて仕方がないぞい。

「まあ、年長者として任務を果たしつつ、風丸殿を支えて見せますぞ。種子島の技術はJAPAN一ィイイ、ですからな」
「ははは。言いますな。しからばその力、存分に示していただく。ついでで明石を助けようというのです、こき使わせていただくが、よろしいか」
「望むところ、ですじゃ」

 

 

「……だからといって、初陣がこの相手ってどうなんじゃろうなぁ……」

 眼前に広がるのは毛利の旗。なんというか世紀末でひでぶな感じの格好をした足軽部隊、その中で映える……メイド服? わけがわからん……がわかりやすい。ああげんなりじゃ……。

「技師長……あの啖呵切った時のかっこいい技師長はどこ行っちゃったんですか情けない」

 そうは言うがのぉ……。初陣がいきなり毛利が長女、毛利てるが大将を務める部隊とじゃぞ? 父に似てバトルジャンキーとの噂の毛利てる。あまり戦いたくはない相手じゃが……。

「ここに至っては是非もなし、かの」

 戦場は姫路国内、明石勢は、儂が提案した簡易陣地に守られる形で陣取っておる。まあ、陣地つーても鉄条網で二重三重に囲まれただけの簡素なもんじゃ。
 ……が、それで充分。僅かでも足止めできればいいんじゃ。

「毛利勢が四部隊で約三千。明石勢が三部隊で千五百。加えて謎の鉄砲集団が、森の中にひっそり隠れて八百、ですか。今の明石の錬度と、毛利の士気の高さを考えると大分不利ですねぇ」

 〇五式試作ライフリングカスタムを片手に持った麻耶、技術者としても軍人としても、いつの間にか儂の副官に収まっとるなぁ。
 さておき。この合戦に出陣しとる明石の軍勢は、朝比奈百万、相楽寛二郎、バース・ザ・タイガー(………)の三将が、それぞれ武士隊、足軽隊、僧兵隊を率いておる。
 対する毛利は、足軽隊が毛利てる隊ともう一隊、武士隊と軍師隊がそれぞれ一隊じゃ。

「手筈通り、鉄条網の内側に陣取ってくれてますねー」
「うむ。儂らの準備も整ったし、後は開戦を待つばかりじゃな」

 因みに。

         兵種 兵数 行動 攻 防 知 速   スキル
 柚原成章  鉄砲 400  4   7  3  7  5   待機、射撃、十字砲火、陣地作成
 西表麻耶  鉄砲 400  3   6  3  6  5   待機、射撃、十字砲火
 (十字砲火……特火点を作り出し、火力を向上させる。ダメージ1.5倍)
 (陣地作成……味方部隊に攻・防いずれかに強力付与)

 こんな感じじゃ。
 ……はっ!? 今、儂は何を……?

「技師長! 来ましたよ!」
「お? おお! あいわかった、総員弾込め用意! 一分間の統一射撃! 初撃以降二十秒毎に一斉射じゃ! 訓練の成果と銃の性能、存分に示すのじゃあ!」
『応!!!』

 戦争の新たな姿を見せてやるわい! 

 

 勝負は開戦早々、数で勝る毛利勢が、ガード中の相良隊に襲い掛からんと突撃を仕掛け、割とあっさり鉄条網に引っかかった……今この時! ここで決める!

「撃てぇええい!!!」

 それは雷鳴の如く! これまでの鉄砲より更に大きな発砲音が鳴り響き、初劇で突進してきておった毛利勢を一気になぎ倒す!
 だがまだまだ、こっから一分、ずっと儂らのターン!

「第二射用ー意……三、二、一、撃てぇい!」

 再度の轟音、そしてまたばたばたと倒れる毛利勢。驚く顔が浮かぶようじゃ、が、まだまだ!

「発砲音がバラけとるぞい! 合わせんかい! 第三射いくぞい! 三、二、一、撃てぇい!」

 くっ! またずれてきとる! まだまだ弾込めに手間どっとるか! だがもう一射! これさえ撃てば儂らの仕事は。

「これで終わりじゃ! 第四射……撃てぇえい!!!」

 更にばらけた発砲音、しかしそれでも毛利勢の足を止め士気を殺ぐには充分じゃ。完全に陣形を崩され壊滅状態の毛利勢。唯一健在なのは……やはり毛利てる隊か! じゃが、これで終わったわけではないぞい!

「ぬぉおおおおおお! 突撃ぃいいい!!!」

 突撃していく明石勢。銃撃で打撃を与え、そこに突撃して粉砕する。常套じゃが、朝比奈殿率いる部隊じゃ、戦意も高いし、相当の戦果を挙げられような。

 

 実際。毛利勢は毛利てる隊を除いて壊滅。明石は久方ぶりの勝利に沸きに沸いた。
 そして……。

 

「くっ……。惨敗だな……。しかし、面白い! あの鉄砲隊……明石自前ではないだろうな。きくに頼んで調べてもらうか……。くくくっ、楽しみだな!」

 ……なんか、変なフラグ立ったかの?

 

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(c)Ryuya Kose 2005