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戦国ランスオリキャラであれこれ

「おーう、それじゃあ始めるぞ」

 種子島の城は大広間、そこに重臣たちが一堂に会しておった。

 〇五式小銃が完成したのが三月、つまり先月じゃ。以来、十二分に試験を重ね、不具合を洗い出して正式な量産型の完成を目指しておる。

 で、それに先立っていっちょここらで大攻勢を仕掛けよう、という話になった、らしいのじゃ。
 もちろん、どこぞに侵攻するというわけではない。商売での大攻勢、じゃ。

 

 四月に入ってから、JAPANの情勢は急激に動きを見せ始めておる。その中でも、尾張の織田家。ここの動きが活発極まりない。
 織田家は、一時期JAPAN最大の勢力であったらしいのじゃが、先代の当主信長が妖怪大戦争とやらで死んでからケチがつき始め、当代の信長(襲名制らしいの)が領土拡張……というか国政に無頓着なせいで有力武将が次々と離反し領地は減り続け、遂に尾張一国のみにまで勢力を落としたらしい。
 加えて先月には、久保田法眼らによる反乱が起き完全に内部分裂、滅亡も間近か、と見られておった。
 ところがどうして、その内乱はあっさりと信長方の勝利で終結。それどころか織田は伊勢を治める原家、まむし油田・京を治める、一時期は全国統一を成し遂げていた武家棟梁、足利家を攻め滅ぼし、あれよという間に四カ国の大名にまで返り咲いたのじゃ。

 

 そして、これが契機となったか、全国の大名たちも動きを見せ始めておる。

 まず佐渡・MAZO(ちょwwwおまwwwその国名はないわいwww)を治める上杉家。
 上杉家は代々女性の立場が強いらしく、政戦両面において女性が活躍しとる。この世界に於いては男女間の身体能力差とかはあんまり考えん方がいいのかのぉ……。
 さておき。当主はやはりというか上杉謙信。で、やっぱり女。JAPAN最強の武将と名高く、軍神との呼び名もある。義将としても有名で、西に侵略を受ける国あれば、行って助太刀してやり。東に侵略を企てる国あれば、つまらないから止めろと(肉体言語で)言い。とまあ東奔西走、侵略戦争に介入して野心持つ国を挫く事を繰り返しておる。
 ……戦国の世にそんな事してもしゃあないと思うんじゃがのぉ。軍神様の考えはわからんわい。
 まあいいわい。で、その上杉家。織田家を大分警戒し始めとる。そのうちぶつかるかもしれんの。

 次に、信濃・貝(……もはや何も言うまい)を治める武田家。
 まあ、実際この国が活発なのは最近の話じゃないんじゃが。天下統一に最も近いといわれながらも、前述の上杉と後述の北条に押さえ込まれて思うように動けずにおる。
 しかしまあ、てばさき……とかいう……チョ○ボっぽい動物を利用した騎馬……騎鳥? ……便宜上騎馬にしとくかの。騎馬突撃の破壊力は抜群で、何かの拍子で均衡が崩れれば全土を席巻する力を秘めとるのは間違いないじゃろうな。

 次。毛利家。
 少し前まではそんなに強くなかったんじゃが、当主の元就が妖怪に呪われてアホみたいにでかくて強い身体を手にしてからは連戦連勝。今では赤ヘル・戦艦長門・出雲・中つ国の四カ国を治め、なお拡大を続けようとする有力勢力にのし上がっておる。
 つーかこの国……丹波種子島家の隣国なんじゃが……なんか、やばいんじゃないかの? 不安じゃ……。

 次、南アフリカ・アマゾン・モロッコ・カイロを治める島津家。
 四人兄弟が国を治めており、その全員が女好きで有名らしく、その国の女を落としてるうちに勝手に国も落としてたとか何とか……ほんまかいな? まあ、今のところこれ以上の拡大を求める動きはないんじゃが……要注意じゃ。

 最後、江戸・上総2000・さいたま・死国を治める北条家。
 この北条家、陰陽師が集まる呪術の国で、武士の立場は他国に比べてだいぶ低いようじゃ。国主の北条早雲は非常に秀でた陰陽師で、また人格者でもある。天下布武を望むような人間ではないが、勢力は大きいので注意じゃ。

 

 大体こんなもんかの。
 まあ、つまりはJAPANには戦乱の気配が満ち溢れているという事で。そしてそれは、武器商人にとっては格好の稼ぎ時、というわけじゃな。冒頭の重彦の言葉は、つまり販売戦略会議を始めるぞ、という言葉であるわけじゃ。

「おーし、それじゃあ成章。頼むぜい」
「はっ。では某が」

 ……何故儂が司会役なのか。恐らくモブキャラの口調をいちいち考えるのがめんどいからじゃろうなぁ……ん? 儂は今何を? ……まあ、いっか。

「え〜、去る三月に某が開発しました〇五式小銃が、次期主力武器として採用される事が内定しております。それに見合うものを作ったという自負はございますが、それを認めていただいた事に感謝の意を表させていただきまする」

 ぺこり、と頭を下げる。丹波は技術者の国、良いものは良いと客観的に判断出来る人間が多いが、しかしそれでもプライドはある。こんな若造に栄誉を掻っ攫われて内心面白くないものもいるじゃろう。
 卑下する事なく胸を張り、同時に増長しない姿勢を見せる。案の定、「まあ仕方がない」など渋々ながらも認める声がちらほらり。これで和が保てるのならば幾らでも頭を下げるわい。

「で、正式量産型完成の暁には、現行の火縄銃との入れ替えが始まるわけですが……。それに掛かる費用の捻出と、旧式の処分を兼ねて、【在庫一掃☆大鉄砲販売祭り】を開催する運びとなったわけであります」

 これは重彦肝いりの決定事項じゃった。
 旧来の鉄砲と〇五式との間にはかなりの性能差がある。そんな最先端技術の塊を、いきなり他所に売り出すのはさすがに不味いわけじゃな。それに実戦証明だってまだ済んでおらん。自身の作品の出来を疑うわけではないが、それでもいざという時に何か起こっても遅いのじゃからな。
 じゃから、製造法などが漏れてもさほど痛くなく、もしその銃口が儂らに向けられても対処が比較適しやすい旧式鉄砲を売りさばく。鉄砲の有効性をまず全国に知らしめ、然る後に欠点を解消した〇五式を真打として売り出す。そういう流れを考えておるらしい。

 その事自体は、儂も賛成じゃ。正しい手順じゃろう。
 しかし、無差別に全国に売りさばく、というのは、儂は反対じゃった。

 

 ――武器とは、他を挫き自を生かすためのものである。
 ――戦争は平和への道のりであり、平和は戦争への道のりである。

 この二つが、儂の信仰じゃ。
 そして今回、後者の信仰に引っかかった。
 乱世に平和をもたらすには、天下を統一するしかない。和だけではまとまれない事は、前世でも今世でも、歴史が証明しておる。そして天下統一を促すならば、均衡を崩す必要がある。つまり鉄砲を持つ国と持たぬ国にわけ、同時にそれが勝者と敗者へとわかれる流れを生む。さすれば、統一は早まるじゃろう。儂はそう考えたのじゃ。全員が鉄砲を持てば、流れる血は多くなる。少ないに越した事はないのじゃ。

 じゃが。それは傲慢というものじゃろうか……。既に兵器を生み出している以上、儂は確実に間接的な殺人を数多く犯しておる。その数を今更減らそうなど……。
 そう思うと……儂は反対し切れなかった。ただ「無差別に売りまくり、八方美人を続ければ睨まれる」などとそれっぽい事をいい、会議にて販売先や販売量をある程度決めてみては、と進言する事しか出来なかった。

 とはいえ、今はもう迷っておらん。決めるまで、決まるまでは悩み。そしてどんなに悩んでも、決まった以上はそれに突き進む。それが染み付いた軍人の習性じゃった。後はもう、せめて統一の力になればと祈り、また力を尽くすしかない。
 そしてこれはその一歩であるのじゃ。

「事前協議では、武田、上杉、北条、毛利、島津、そして織田。これらの有力な大名には積極的に販売攻勢をかけて行きたいという話になっておりますが、これに関してなにか意見はございますでしょうか?」

 そう問いかけると、数人の手が挙がる。

「では、南部殿」

 ……このお方、南部機銃郎という名前で、種子島家臣団の中でも重鎮に位置するお方じゃが……南部姓というのがまた。

「うむ。武田に関してだが……販売数は減らすべきだと考える。ただでさえ騎馬軍団という武田独自の軍団を持っておるのだ、これ以上力を与えてはどうかと思う。それに、てばさきは元来神経質な動物だ。鉄砲との併用は難しいだろうし、販売数もそう伸びはすまい」

 ふむぅ。確かに、大音響に加え多くの火の粉を撒き散らす火縄銃は、騎馬隊と合わせての運用は難しいかも知れんのぉ。しかし大国であるが故に市場も大きい。他に大口がなければ売らざるを得ん、か?

「その心配はいらねぇな」

 ん? なんぞいい案か情報でもあるのか重彦サマよ。

「島津の三男坊が鉄砲の噂を聞きつけたらしくてなぁ。どどんと千丁の大口注文だ」

 おお、というどよめきがそこかしこから生まれる。そりゃのう、まだ大多数に未知数の兵器だと思われている鉄砲を、躊躇いもなくいきなり千丁とは。……まあ島津四兄弟はどいつもこいつも享楽的なところがあるみたいじゃし、これもその一環かの? まあこっちとしては有り難いが。

「それがあれば、無理して武田に売る必要はありますまい」
「ま、それでいいだろ。成章もいいな?」
「はっ。御意に」

 ……国主様と南部殿にいわれてなおNOといえる日本人ではないんじゃよ、儂。まあ反対する理由もないんじゃがね。

 

 で、その後も会議は続き。意外なところではテキサスの浅井朝倉家が、なんと島津を上回る大口注文を考えている事がわかった。間違った行為ではもちろんないんじゃが……なに考えてんじゃろ、あの国。交渉で天下統一目指すんじゃないんか。

 ともあれ、向こうさんから欲しがってるところには勿論積極的に販売攻勢をかけ、その他の有力どころにもそれなりに。武田は押さえ気味で、といった感じで会議は進んでいく。まあ正直販売に関しては儂ぁ素人じゃからの。丸投げじゃい。

 しかし、この販売攻勢を経て、JAPANの時代はまた動くじゃろう。一体どんな未来が待っておるのやら……。

 その答えの一端を儂が垣間見るのは、二ヵ月後。六月になってからの事じゃった。

 

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(c)Ryuya Kose 2005