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戦国ランスオリキャラであれこれ

 オッス、おら小金!

 

 ……外したか。まあいいわい、今の儂は柚原成章じゃし。

 さて、アレから一週間。ついに退院を許された儂は、早速開発三昧の生活、には突入せなんだ。
 そりゃそうじゃ、だって儂、この世界についてなんも知らんもん。じゃから儂は記憶回復のためだとか、頭のリハビリだとか言い張って、この世界について調べる事に専念した。

 文化風習気候言語人種歴史、そういった一般知識を修めるのに約三週間を費やした。こういった身近な知識は生活の中で身に付いていくものじゃから、基礎的な事だけ学んで、後は慣れて身体で覚えていくつもりじゃ。……しかし魔人とか魔王とか……思った以上に物騒じゃのお。このJAPANにもかつて魔人がいたというが……さて。

 で、ここからが本番。
 どんな技術がありどんな技法が伝わりどんな機材がありどこにどんな資源があるのかどうやって採取しているのか、儂の知っとるモノ知らんモノ、物理法則からなにからなにまで、おおよそ研究開発に関わりそうな事項を徹底的に調べて調べて調べつくす!
 無から有を生み出す事は出来ん、儂ら技術者に出来るのは、ありとあらゆる知識と発想、物質から異なるものを生み出す事のみ。土台がなくば何も出来ん。その土台を固めるためならば、一ヶ月や二ヶ月、どうという事はない!

 そんなわけで三ヶ月間、儂は学びに学んだ。まだ若い脳は知の吸収も良い。ついでに、なにやら技能レベルとかいうものの恩恵もあるらしいが、とにかく儂は少なくともこの丹波で一、二位を争う知識を蓄える事が出来た。
 ……ついでに言えば、どうやら「事故で記憶喪失になった柚原成章」はどうやら国内でも注目される情報だったらしく、都合半年に渡る儂の行動は興味を集めに集めておったらしい……。めんどくさいのぉ。
 しかし、そのお陰で人間関係は広がったからよしとしようかの。

 ともあれ、下準備は十二分。いよいよもって、開発三昧じゃぁああ!

「三昧じゃあ、じゃねえぞ、おう成章ぃ」
「これはこれは、重彦様」

 気合を入れとった儂の前に現れたのはポリゴン男、もとい国主・種子島重彦。はて、なんの用じゃろ?

「お前さんよ、いま種子島が鉄砲開発中だって事は知ってるだろうがよ、開発には金が掛かる。だってぇのに、何でまた新型の炉の開発申請なんだ?」

 いいながらぴらぴら揺らしとるのは……おお、確かに儂が申請した新型製鉄炉開発案、じゃな。

 新型製鉄炉、それは儂のいた世界で言うコークス燃料の反射炉と、パドル法を組み合わせたものじゃ。反射炉は江戸時代にも建造されておったものじゃし、その設計図もうろ覚えではあるものの頭の中にあった。加えて原理も理解しておったから、作れん事はないじゃろ、たぶん。耐火煉瓦の目処も立ちそうじゃったし、これならよかろうと思って申請したんじゃったな。

 何故鉄砲の開発に移らず、金も時間も掛かる製鉄炉から手をつけたか。それは、現行の鉄砲の強度不足が最大の理由じゃ。なんせ、銃身が十発の発砲にさえ耐えられんのじゃ! 使っとるうちにどんどん劣化して、銃身が破裂し暴発する危険性があまりにも高い! これでは兵器として失格じゃ! そも、儂が巻き込まれた事故も、銃身の劣化による暴発事故じゃったらしい。
 これはもう根本から正すしかない。質の良い鉄を大量に精製する事が出来れば、必然的に強度も上がり暴発事故も少なくなるわけじゃな。

「というわけで、上申したわけですじゃ」
「なぁるほどなぁ。しかも上手くすれば鉄の輸出でも儲けられるかも知らんか……。おうし、わかった! 存分にやったれ」
「有り難き幸せ!」

 よっし、認めさせたぞい! この重彦という男、技術者としても一流じゃが、商売人という側面も持っとる。その双方にメリットのあるこの案、逃す事はなかろうと思っておったが、そのとおりじゃったな。

 仕込みは上々、あとは成果をごろうじろ、じゃな。ふはははははははっ! 
 ここからずっと、儂のターンじゃぁあああ!

 

 

 

 ……そんな事を思っていた時期が、儂にもありました。

 結果から言って、反射炉は完成した。今までよりも質のよい鉄が、今までよりも大量に作れるようになった。なったんじゃが……肝心の鉄鉱石がのぉ……出んのじゃよ、思ったより。産出量が上がらんのじゃ。幾ら蛇口がでかかろうと、流れてくる水が少なければあまり意味はない。これが世界の修正力というやつかのぉ……。
 質は上がっとるから最低限のメリットは得られたわけじゃが……。流石に儂も鉱山の運営やら採掘法やらの知識はないし、個人でどうこう出来るわけでもないからのぉ。まあ、重彦は精製された鉄の質の良さに上機嫌だったから、まあ、いいかの。儂にとってもいい薬になったわけじゃし。

 まあ、こっからが儂にとっての本領、本番じゃ。
 構想は、ある。基本的には先込め瞬発式火縄銃、ライフリングは現時点では技術的に難しいので滑空銃にする予定じゃ。
 一時期、プチハニーとかいうモンスターの一種を雷管代わりにしてみようかとも思ったが……やめた。だってあぶねーんじゃよ、あの瀬戸物。それに、いくらチート知識があるからといって、最初っからサンパチみたいなモノが作れるわけではない、というのは先日学習済みじゃ。他の技術者にも原理を一つ作り解していかせないと、量産なんて夢のまた夢、儂にしか作れないんじゃ意味がないからのぉ。

 さて、それではやってみるとするかの。

 

 

 ずどん、と晩冬の空気を震わせる発砲音。遅れてずどぉん、と一回り大きな発砲音。じぃん……と伝わる振動が儂の感動を現す擬音のようじゃ……ッ!

「ああ……イイ……ッ」

 変態くさいとか言うな、自覚しとるわい。しかしそれを言うと……。

「……いい」

 隣で同じくじぃいんとしている我が孫……じゃなかった、妹も、相当な変態という事になってしまうんじゃが……まあ、変態じゃな、割と。

「……なに? 兄様」
「いや、なんでもない。しかし、これで一先ず完成じゃな」

 たった今試射を行い、五十メートル先の一般的な胴鎧の鉄板を打ち抜いたのが、儂の開発した鉄砲じゃ。有効射程距離は約百メートル、装薬量を調整すれば更に伸びる。つまり百メートルの距離ならほぼ確実に鎧武者を殺傷する事が出来る威力をもっとる。ファーストステップとしては上々の完成度じゃろう。

「〇五式小銃……完成じゃな」

 LP暦五年に完成したから〇五式、安直な気もするがこれが基本の命名じゃ。

「……かわいくない」
「……鉄砲が可愛くたってしょうがないじゃろが」

 このむっつりミーハー孫め。……いや、だから妹だってば、儂。なんかどうにも妹だとは思えんのぉ……どうしても孫扱いしてしまうわい。

「しかし……柚美の銃もいい銃じゃのぉ」
「父様が作ったから……当然」

 儂の隣で射撃しておった柚美が使うのは、亡き父君が作った傑作銃「箒星」じゃ。大陸から流れてきた……バズーカじゃろうか、チューリップの絵が掛かれた携行火器をモデルにしとるとはいえ、チート知識を活用した儂の〇五式に匹敵する性能を持っとる、まさに傑作銃じゃ。ワンオフ、というか半ば偶然の産物であるというのが実に惜しい。

「そうじゃのぉ。儂もいじってみたんじゃが、あんまり手を加えられんかったしの」

 儂がした事といえば、照準器の改良に軽量化、狙撃用モノポッドの装着と、おまけみたいなもんじゃった。元があまりに完成されとるもんだから、下手に手を加えると改悪になりかねんかったのじゃ。

「でも……兄様も火薬とか、早合とか……すごく助かってる」
「おお、そっちか。そっちは、まあ確かに自信はあるのぉ」

 そう。儂は銃の開発と平行して火薬と早合の開発も進めておった。
 これまで装薬として使われておったのは、火縄という物質じゃった。……正直呆然としたもんじゃよ、だって火縄が採掘できるんじゃもん。なんというか、RPGとかで拾えるアイテムみたいな扱いじゃな。さすがに頭がくらくらしたわい。
 しかしまあ、気を取り直して調べてみると、結局のところこの火縄という物質は黒色火薬と極めて類似している事がわかった。というか、儂のいた世界で黒色火薬として存在していたものが、この世界に於いては火縄として存在しておるようじゃ。そしてそれは黒色火薬に限らず、他の物質もこの世界では違い形で同じ性質を持って存在しておる場合が多かった。それがわかれば、後は何とかなった。

 今や丹波の火薬は、従来の黒色火薬(=火縄)に塩化カリウムから精製した塩素酸カリウムを加え、爆発力を高めた改良黒色火薬に刷新されているし、弾丸と火薬をパッケージ化した早合も、既に一般的なものへとなりつつある。特に後者は現行の火縄銃の最大の欠点の一つである装弾速度の向上に役立っており、射手から有り難がられておる。

 しかし、ここまで来れば、前装式火縄銃としては完成の域にあるといってもいいじゃろう。そろそろ、次のステップかのぉ……。
  今研究中の雷管が完成すれば、装弾速度と並ぶ現行の銃の欠点、雨天時の運用という問題も解決し、銃はより安全で強力な兵器となる。前装式銃が完成の域に達すれば、次は後装式、そして金属薬莢と夢がひろがりんぐじゃな! ライフリングも蒸気機関で動く工作機械が完成すれば、できん事はなさそうじゃし、いやあ楽しみじゃな!

「兄様と、父様の力が合わさった銃を、私が使う……。家族一緒だね……」
「……そうじゃな」 

 かいぐりかいぐり、と父の喪失から立ち直ったまg……じゃなくて妹の頭を撫でる。

「ん……」

 照れつつもされるがままのその様子を見ると、研究開発三昧もいいが、これはこれでいいもんじゃなぁと思えてくるわい。前の人生では、子や孫と顔を合わせるような機会はほとんどなかったからのぉ……。今度はこういう時間も大切にしていきたいもんじゃ。

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(c)Ryuya Kose 2005