- k a r e s a n s u i -

- FourSeasons / あとがき -

 ……これにて「Scenes of fourseason」は完結に御座います。ここで、補足というか言い訳というかを少々。

 彼が、今後水泳を続けるのかどうかはわかりません。彼はただ、見誤っていただけだったんだと思います。水泳から始まり水泳で経過していた二人は、けれどそれによって繋がれていたわけではありません。ただの一つの手段としての、でした。
 「泳ぐ事」が大切なのではなく、「一緒」に泳ぐ事が大切だったわけでして。泳ぐ事を中心にしていたので、それが失われた後の二人がどうなるのか、彼女に庇われた彼は悔しさと申し訳なさと不安とで、しがみつく事で振り切ろうとしたわけです。結果、彼女の手をも振り払ってしまいそうになったわけでして。まあ、そこは彼女の方から掴みなおしに来てくれましたが。

 正直、悩みました。
 必死のリハビリの結果、彼はかつての自分を取り戻し……となってもいい、というよりその方が明るいというか前向きなのでしょうが……。
 言わばかつての惰性で泳ぎ続けていた二人なのですから。
 想いを告げあったわけでもなく、水泳で繋がり続けた二人ですから。水泳という物を失って、彼らは一度ほどけてまた新たに繋がりあったわけです。水泳というもの抜きで、彼ら自身の気持ちや心で。
 言わば水泳を失うというイニシエーションを経て、二人の関係は以前と同じ様な、それでいて異なるものに深化した……という感じでしょうか。
 
 ただ、第四章「SpringDays Symmetry」を書いている最中、同人ゲーム「A Profile」をやって、かなりぐらつきまして……完結こそしたものの、なんだかもやもやとしたものが残ってしまったような。
 
 あっさりとした文章を目指したため、勘定や心情を述べる文を極力減らしたのでわかり難かったかもしれません。共感を得にくい結末だったかもしれません。けれども、読者の方の心に、駄作を読んだ事による不快感ではない、なんらかの漣、波紋を起こせたなら……この小説は、成功だったと思います。
 
 では、これにて完結です。短編四部作とはいえ、無事に完結できてよかったと思っています。では、もし宜しければこれからの作品にもお付き合いください。
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(c)Ryuya Kose 2005