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永遠のアセリア Another after story 〜The Sword of Karma〜



「青はバニシュに専念! メルシアードとリリスは魔法で妨害!」

 了解、と声を出す暇さえ惜しく、発声に使う酸素すら惜しい。必死に攻撃をいなし、防ぎ、ひたすら後退を続けるその有様は、欠員こそまだ出ていないものの、既に敗軍のそれだった。



 エドネス隊を窮地に追い込んだ、ラキオス軍の――否、悠人の提案した作戦はこうだ。

 まず、今現在ラキオス軍の進軍を阻んでいるのは、エドネス率いる部隊による妨害と、そこかしこに仕掛けられたトラップ群である。
 エドネス隊は無闇に戦闘を仕掛けてこず、仕掛けてきても上手くトラップを利用して消耗を防ぎ。また時には正規軍に襲い掛かり、ラキオスがスピリットを防衛に回さざるを得ない状況を作っている。

 いかに兵力差があろうと、負けない戦いで時間稼ぎに徹してくる敵を無力化するのは、短時間では難しい。時間をかければ不可能ではなかろうが、そんな事をしてはせっかく手薄なはずのリレルラエルの防衛体制が回復してしまうし、攻略戦の時に疲労していては話にならない。
 
 迅速な突破と、疲労回復、そして障害物――つまり、エドネス隊とトラップの除去。
 これら全ての条件を満たすための一手。それは異端であるエドネスには打ちたくても打てない一手であった。



『マナ結晶を使わせて欲しい』

 悠人は国家元首であるレスティーナに対してそう要求したのだ。
 マナ結晶とは、字のとおりマナが結晶化したものであり、それを砕けば身体がマナで構成されているエトランジェとスピリットは、大分乱暴にではあるが疲労とマナを回復させる事が出来る。
 しかし、そんな素敵アイテムがそうそう使えるわけもない。マナ結晶は貴重品であるし、いわば国家の重要な財産である。軍事利用ばかりしていいものではないし、そもそも戦時中である今、ラキオスの財政は決して楽ではない。
 当初、悠人に頼まれたレスティーナは悩んだ。リレルラエルを攻略するのに必要な部隊全てを賄うマナ結晶など、はっきり言って出せるものではないからだ。しかし、ほかならぬ悠人の頼みであるのなら、と思うところもある。
 だが悠人は、ここで思いもよらぬ発言をする。

『いや、マナ結晶は一つでいい。俺と、アセリアと、エスペリア。この一個小隊で、リレルラエルを落とす!』

 ………。
 ………………。
 ………………………。

「はぁ!!??」

 その叫びを聞いた教育役を務める老齢の侍女の眉間に、盛大に皺が寄ったがそれはさておき。

「………。勝算は、勿論あるのですよね?」
 
 混乱を自力で押さえ込んだレスティーナが、突き刺さる侍女の氷点下の視線を努めて無視しながら問う。

『ああ。レスティーナにももう報告がいってると思うけど、今交戦中の部隊は、足止めに徹してる。逆にいえば、奴らがいる以上リレルラエルの防備は整ってない、って事になる。なら、今強引にでも足止め部隊を抜いてリレルラエルに奇襲をかければ……』
「……しかし、足止め部隊を抜けないからこその現状でしょう?」
『ああ。だから俺たちだけでリレルラエルへ向かう。他の皆には、足止め部隊を押さえ込んでもらうつもりだ』
「……成る程」
『エスペリアたちの了解も取り付けてる。あとは、レスティーナが認めてくれれば……』

 そう言われては、レスティーナも弱い。とはいえ、リスクとメリットの計算は疎かにしない。そしてレスティーナは決断し。



「雲散霧消の太刀ッ」
「リィイイプ、アタァック!」
「駆けろ! フレイムレーザー!」

 その結果が、このラキオス軍の猛攻であった。
 選ばれた英雄であるエトランジェだからこそとり得た、そして異端でしかないエドネスには、採りたくても採れない戦法。
 勝負を決めたのは、お互いの力量差でも物量差でもなく、立場の違いだったといえるだろう。





 バニシュスキルが降り注ぐ魔法を打ち消す音が絶え間なく響き、剣戟を障壁が防ぐ甲高い音が耳を突く。目標を逸れた火球が地を焼き、耳元を掠めた光線が大気を焦がす。
 押し寄せる音、音、音。その全てが、押し迫る破滅の足音のようで。予感を振り払うように、しかし予感を感じさせる言葉を叫ぶ。

「チィッ! 隊長、左前方から敵が来てる!」
「このままでは囲まれてしまいますわ! 私が突破口を!」

 既に敵に位置を悟られてしまい、もはや声を潜める意味はない。ならば不安を押し返すためにと、声を上げ己を奮い立たせんとする。

「くっ……許可する、行け! 死ぬな!」
「了解致しました! 蹴散らして魅せますわ!」

 一瞬だけエドネスに笑みを見せ、そして疾風の如くメルシアードは駆けていく。

「これで隊長の直掩はあたしだけかッ」
「要らないと言えんこの身が恨めしいよ!」

 戦闘、それもほとんど撤退戦のようなそれが始まって既に十分が経過し、エドネス隊の劣勢は最早明らかなものとなっていた。

 これまでエドネス隊がラキオス軍に対して優位を保ってきたのは、常に戦闘の主導権を握り、決してそれを放さなかったから、というのが大きい。一度受身に回ってしまえば、川の流れに浮く木の葉の如く、一揉みにされてしまうのは目に見えていた。
 それがわかっていたからこそ、決して正攻法では攻めず、罠を活用し、深追いせず素早く逃げる、という行動を取ってきた。
 また、リレルラエル攻略のために余計な消耗を避けたい、という心理をも上手く衝いていた。
 だというのに。

「作戦も罠も事情も全てを食い破る……。これが選ばれた者の力か、畜生が!」

 嘆いても仕方がない。そうわかってはいても、悪態を吐かずにはいられない。今現在も、人間であるエドネスを守り、また移動を補佐するためにフィルフィが付きっ切りになっている。その影響で、他に皺寄せが行ってしまっているのだ。
 ブルースピリットは後方で降り注ぐ攻撃魔法の迎撃で手一杯、耐久力の低いレッドスピリットは前面には出せない上に、詠唱に時間の掛かる高火力の魔法が使えず、効果的な支援が出来ていない。フィルフィはエドネスが文字通りお荷物となってしまって実力を発揮出来ずにいる。しかも敵は前方にも回りこみつつあり、現状では包囲されるのも時間の問題だった。



「――ですが、その時間を引き延ばす事は可能!」

 己が無力を噛み締めるエドネスの前方。主の思いを知るが故に、それを少しでも晴らさんと十数名のブルー及びブラックスピリットを前にして。メルシアードはその足を全く緩めず吶喊する!

「ッ! 来いッ!」

 敵の先頭にいたブラックスピリットが真っ先に反応し、先の後を取らんとカウンターの構えを取る。

 ――しかし。


 ――万物一切、斬り払いて清浄と為す――


「――六根清浄の太刀!」


 それは正に神速の剣閃。カウンターを狙い、構えを済ませていたはずのブラックスピリット。それが微塵の反応も出来ずに……一刀両断!
 宙を舞う首は、驚愕の色を浮かべる事さえ間に合わず、不敵な表情を浮かべたまま。地に落ちてからも、己の死を認識できなかったためか、その形を留めたままで。


……ぐしゃり、と。メルシアードに踏み潰されて、ようやく金色の霧となった。


「うふふふふっ……」

 微笑。金色の霧の中、人外の美貌で微笑むその様は、凄惨な美しさを秘めていて。

「う……っ」

 数に勝り士気に勝っていたはずのラキオススピリットは、その魔性の美、そして技に足を鈍らせる。

 ――そしてそれこそが、微笑の裏で苦痛を堪える、メルシアードの狙いである。

(くッ……やはり、負担が大きいですわね……。撃ててあと二回、といったところでしょうか)

 しかし、パフォーマンスとしては最上だった。いちいち相手にしてはジリ貧になるのは明白。だからこうして勢いを絶ち、萎縮させて少しでも不利を挽回できるように技と演技力と知恵を尽くしている、のだが。
 それでも、状況を打破するには、一手足りない。その一手が、エドネスの手元にはなかった。



 そう――手元には。





「ウィングハイロゥ持ちは敵前方に回りこんで! レッドスピリットは手数を重視して敵に休む間を与えないで!」

 ラキオスの分隊――といっても投入兵力の九割方の規模だが――を率いるファーレーン・ブラックスピリットの声が響く。妹分であるニムントールを傷つけられた彼女の士気は高く、豊富な経験と冷静沈着な思考を存分に活かし、エドネス隊を追撃していた。

「第五、第八小隊の消耗が激しくなってきました!」
「後詰から適宜抽出して入れ替えさせて! 追撃の手を緩めないで!」
「了解!」
「ふうっ……。ここまでは順調ね」

 作戦開始から矢継ぎ早に指揮を飛ばし、敵に比すれば遥かに巨大な軍勢をよどみなく、かつ速やかに機動させてみせたファーレーンは、決まり始めた形勢にようやく一息ついた。

「……先日ウルカ様が苦汁を飲まされたのが嘘のようですね」

 副官の、どこか呆けたような声。
 帝国最強と謳われたウルカが不覚をとった相手。それが先手を取られただけで、なす術もなく追い立てられていく。その現実に、自分たちが恐れていた、実際に恐れるに値したはずの獣は、実は張子だったのかろうか? そんな思いが沸き起こる。

「……そうでもないわ。当初の予定では、とっくに包囲を完成させて殲滅に移ってる頃だもの。現に、ようやく包囲体勢に入ったウィングハイロゥ持ちの部隊が、たった一騎に押し返されているわ」
「! それはまた……大した猛者ですね」
「ええ。……でも、それだけ。このままで充分磨り潰せる。押さえ込めばいいとは言われているけど、この先を考えれば、あの部隊は絶対にここで潰しておくべきだわ。慎重、かつ確実にいくわよ」
「ハッ!」



『――うっ、隊ち――! も――持ちこ――えら――ない!』
「チッ……前方の包囲も狭まって来たねぇ! メルもそろそろ限界か!」
「……ッ」

 レイオンからのノイズ交じりの報告、フィルフィの無念の滲む判断。それらを聞きながら、エドネスはぎりぎりと歯噛みする。
 
(レイオンもシェリオも対処能力を超えている、メルシアードも同じ、シアスにユウラも慣れない接近戦を強いられて消耗著しく、リリスはそのフォロー、ニルギスは回復で手一杯、フィルフィは俺の護衛、イズラはまだ戻らない……いや、戻れないのか? ……糞、糞、糞ッ、打てる手がない!)

 思考と、戦闘の袋小路に迷い込んだエドネス。彼を引き戻したのは、彼が最も信頼しているフィルフィの言葉だった。

「……隊長。打てる手はなくても、打つ手はあるんじゃないですかね?」
「――ッ!」
「この場合なら、サイレントフィールドで魔法を無力化できるレイオンを捨石にすれば、少なくとも敵の魔法攻撃は阻止できますし、そうなりゃ突破も不可能じゃない」
「……俺に、その手を選べと……?」
「ここで死んでも、あたしたちは誰一人隊長を恨んだりなんかしません。でも、隊長はこんなところで、道半ばで死んでいい人じゃない!」

 極限の状況と、自身の無力。そしてフィルフィの言葉。
 その三つが、彼の心の最もやわらかいところを。
 張り詰めていたものが、この一瞬だけ、弾ける。

「……違う! それは違う! 俺はお前たちを連れて行くと誓った! 絶対に切り捨てたりなんて出来ない! 俺にお前たちを……あいつを裏切らせないでくれ!」
「――ッ!? それって――」

 その、エドネスの一言に目を見開かせて。フィルフィが、震える唇で何事かを口にしようとした、その時。

『! 隊長!』
 
 先程とは違い、ノイズのないクリアな通信が話題の渦中にあったレイオンから届く。


 ――突破を許したか、それともバニシュスキルが尽きたのか。

 背筋を走った冷たいものに、すぐに思考を切り替えたエドネスだが、しかしレイオンは。

『天運は残ってたわ! あの子が! あの子がやってくれたわ!』

 色濃い疲労の中に、紛れもない歓喜を滲ませていた。





 一陣の風が……ラキオス陣中を駆ける――。

 その風は、長らくやり込められてきた鬱憤をディバインマジックに籠めて解き放っている、ラキオスレッドスピリット部隊へと襲い掛かった。

「ぐあっ!?」
「きゃあっ!?」

 その影は小柄で、死角からの地を這うような低い剣閃で以って、自身よりも大柄な敵対者の命を刈り落とす。
 本来白銀のはずの神剣【羨望】は、今はその身に漆黒の闇を纏い、その呪いを以って敵対者を萎え劣らせ、高みより引き摺り落とさんとしている。

 故にその一撃の名を。


「天人五衰の太刀!!!」


 膂力、体重の不足による攻撃力の不足を補うために、通常の属性攻撃に加えてアイアンメイデンを剣に纏わせ、全属性の加護に加え防御力をも減退させ、当たれば当たるほど与えるダメージを増すという、えげつない切り札。
 それを、イズラは惜し気もなく切っていた。

「退け……」

 斬る。

「退け」

 斬る。

「――退けぇえええええええ!!!!!」

 斬る!!!!!
 
 そこには普段の人形のような可愛らしさは欠片もなく。美しい顔をいっそ冒涜的なまでに歪めて、イズラは狂剣を振るい続ける。

 何故彼女は狂うのか。
 その答えは、何故彼女は戦うのか、という問いにまで及ぼう。そして、いついかなる時も、イズラはその理由を隠していない。

「わたしはエディのもとにかえる……、エディが待ってる……、だから、邪魔をするなァアアアッ!!!!!」

 唯一にして絶対の主人。否、無二である以上、イズラにとってエドネスはただエドネスである。主人でも隊長でもない、エドネスという存在。
 ここに在る理由、その全てを、イズラはエドネスに預けているのだ。
 だからイズラは走る。エドネスのもとへ向け、立ちはだかる全てを斬り捨てて。
 そしてその会いたいという一念が、エドネスの窮地を救う、「手元にない一手」となる!



「エディ!!!」

 果たして、疲労困憊のレイオン、シェリオを引き連れて、イズラはエドネスのもとに帰還する。

「イズラ! ……よく戻った……ッ!」
「もうあたしゃアンタをなんて褒めたらいいのかわからないよ! ああもう最ッ高さね!」

 エドネス――と彼を抱えたまま走るフィルフィは、並走する形になったイズラを感無量で出迎える。
 生死の知れなかった仲間が生きて帰り、加えて自分たちの窮地をも救ってくれた。ほっとしたやら誇らしいやら。エドネスの、フィルフィの瞳に涙が浮かぶ。

「ふう……。隊長、私たちには慰労の言葉はないの?」

 疲れた顔で苦笑いしているレイオンとシェリオ。
 彼女らはここまでで最大の功労者といっていいだろう。彼女らのアイスバニッシャーやエーテルシンクがなければ、隊員全員が消し炭になっていた筈だからである。

「そんな事はない。よく持ち堪えてくれた! シェリオも、疲れたろう?」
「えっ!? いえっ、その……えと……疲れ、ました、はい……。すっごく疲れましたし、怖かったです……」

 汗いっぱいの顔に、言ってもいいのかと戸惑いの色を見せつつも。

「でも……ぼくも、戦えました。みんなを守れました! それが、凄く嬉しいです!」

 その顔は、一端の戦士の顔だった。

「そっかそっか、これでシェリオも一歩成長したってわけだあねぇ。こりゃあ帰ったらお祝いしなきゃねぇ!」

 フィルフィの言葉はつまり、生きて帰ろうという事。突破口を見出しはしたけれど、未だ隊は窮地の只中。鍵はあり、扉も見えている。後は辿り着き、こじ開けるだけ。

 疲労困憊のブルースピリットに、応急処置としてフィルフィがハーベストで回復を施し、エドネスをユウラに預ける。

「フィルフィ! 今まで俺のお守りばかりで悪かったな!」
「いえいえ、役得ってもんです。たっぷり堪能させていただきましたよ」
「ふっ、ならいい思いした分、思いっきり働いてこい!」
「あいよ! それじゃあ行くよ!」
「総員、吶喊陣形へ移行! こじ開けろ!」
『了解!!!』
 
 フィルフィ、イズラ、ニルギス、レイオン、シェリオ、リリス、シアス。エドネスを抱えるユウラと、前線で戦闘中のメルシアードを除いた全員が神剣を構える。
 【安寧】、【羨望】、【悲嘆】、【孤高】、【飛沫】、【零落】、【枯渇】の七本が、その剣先を揃え。

「吶喊―――!!!」
「雄ォオオオオオオオオオオッ!!!!!」





「……以上、です」
「………」

 報告を受けたファーレーンは、正に呆気にとられた、といった表情だった。

「たった一騎……。たった一騎に後背を突かれただけで……。たった一騎が合流しただけで……。こうも流れが変わってしまうなんて」

 やれやれ、とこめかみを揉み解し溜息を吐く。

 予期せぬ伏兵の襲撃により、敵部隊を圧迫していたレッドスピリット隊が混乱状態に陥る。それにより、対魔法防御に人員を割かなくてもよくなった敵部隊は、前方のブルー、ブラックスピリットの混成部隊を突破し、半包囲状態から脱出。
 現在ファーレーンは、部隊を再編成させているところであった。

「……あのブラックスピリットが合流して以降の敵部隊ですが……」
「?」

 ふと聞こえた副官の呟きに、ファーレーンは視線を向ける。

「あの底力は……隊長方の部隊を見る思いでした」
「……そうね。それはあったかも知れないわ」

 ラキオス軍、主に古参組の強さは信頼に基づいている、とファーレーンは思っている。エトランジェ・悠人が来てからは特にそうだ。
 古兵であるファーレーンから見れば、悠人には足りない部分も甘い部分も、両手の指では足りないくらいあるけれど、それが逆に強さになっている節さえある。
 そして、それと同じものを、ファーレーンとこの副官は敵部隊……即ち、エドネス隊に見たのだ。

「特異だとは思っていたけれど……。今後、注目しておいた方がよさそうですね」
「はい。……! ですが、どうやらこの局面に於いては……」
「……そうね。戦術的には間に合ったのでしょうけれど、ね」

 そう言って、二人が視線をやったその先には、果たして喜色満面の伝令がいて。

「奇襲部隊の状況が判明しました! リレルラエルの奇襲に成功! 城壁を既に突破し、城門の解放に成功したとの事です!」

 事実上、リレルラエルの攻略に成功した事を告げていた。

「そう。……部隊を再編後、三分の二をリレルラエルへ。残りを正規軍の護衛に回しましょう」
「了解」

 これで、ラキオスは帝国領内に橋頭堡を確保したも同然。城壁を既に抜かれた城塞都市に、一体如何ほどの防衛力が残っているというのか。
 そしてそこに精兵といえど人間含めてやっと十名が帰還したとて。

 大勢は、既に決していた。



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(c)Ryuya Kose 2005